●慣れない左側通行、標識 富山県内で外国人ドライバーが引き起こす事故の件数が右肩上がりとなっている。県内を訪れるインバウンド(訪日客)の増加に伴い、「わ」ナンバーのレンタカーを利用する外国人が急増。左側通行や標識など、慣れない交通ルールが原因と関係者は分析する。米紙ニューヨーク・タイムズの「2025年に行くべき52カ所」に富山市が選ばれたことで、さらなる外国人観光客の増加が見込まれており、県警は技能実習生や留学生への周知に努めるなど警戒を強めている。 「外国人の利用が増えてきているのを感じる。標識が分からず、事故を起こすケースもあるので、できる限りの対策をしたい」。こう話すのは県内で6店舗を展開するトヨタモビリティ富山(富山市)の担当者。同社は外国人観光客に安全運転を呼び掛けるため、一時停止や駐車禁止などの標識一覧を記したパンフレットを渡している。 ●昨年13件増の78件 富山県警によると、県内では昨年、外国人が絡む交通事故は前年比13件増の78件発生。今年1〜9月では54件発生しており、前年に迫るペースで、担当者によると、「外国人の事故は増加傾向にある」。2022年は51件、23年は65件となっている。 6月には高岡市の県道で、フィリピン国籍の20代外国人が運転するオートバイと60代女性の乗用車が衝突する事故が発生した。交通事故以外にも9月は、モザンビーク籍の50代外国人が富山市内の県道で酒気を帯びた状態で軽自動車を運転した疑いで現行犯逮捕されている。 ●県警、留学生に指導 県警は今年、富大で新入外国人留学生向けの交通安全指導を行っており、担当者は「交通ルールの周知に努めたい」と述べた。 事故増加の要因としても挙げられるのは、レンタカーを利用する外国人の増加だ。 トヨタモビリティ富山では、1〜8月での外国人の利用は前年同期比40%増加した。とりわけ、ニューヨーク・タイムズで富山市が掲載された直後の1、2月は2倍以上の利用があり、担当者「今年の外国人の年間利用が昨年を上回ることはほぼ確実」と話す。 「昔は全くなかった外国人の利用が年々増えているのは間違いない」。こう話すのは県内4店舗を運営する日産レンタカー富山(富山市)の担当者。1〜8月の月平均利用1200件のうち、外国人は10数件程度だが、中国語や英語などで説明する機会が増えていると感じている。 一方で両社は、外国人の交通事故に懸念を示す。日産レンタカー富山の担当者は過去に、外国人の交通事故で廃車になったケースもあったとする。それでも「外国人は借りる車は大きく、日数も長い。事故のリスクはあるが単価が高いので、利用自体は喜ばしい」と語った。 政府は今月1日、外国で取得した運転免許を日本で有効な免許に切り替える「外免切り替え」制度について、審査を厳格化した。住民票の写しの提出を原則とし、住民票が無い観光客らは適用外とした。