神戸・男子高校生殺害事件 損害賠償請求 元少年、犯行ほのめかすも両親、「妄想」理由に知らぬふり?

神戸市北区の路上で2010年10月、堤将太さん(当時16歳・高校2年)が殺害された事件で、殺人罪に問われた元少年(32・事件当時17歳、記事中では「男」と表記)とその両親を相手に、約1億5000万円の損害賠償を求めた裁判の第10回口頭弁論が21日、神戸地裁で開かれた。 公開の法廷で開かれたのは昨年(2024年)8月22日の第1回口頭弁論以来、約1年2か月ぶり。この間はオンライン形式で争点整理などを進めてきたが、男はこの裁判に一度も出廷していない。 遺族は、「犯行当時、未成年だった男が10年10か月逃亡していたのは、両親も“逃亡を手助け”していた可能性が高く、監督責任も問われるべき。今だに明確な犯行動機がわからないし、なぜ逃げたのかも知りたい。遺族としての思いは賠償金ではなく、真実を突き止めること」と話す。 この民事訴訟では、両親が男の監督義務を怠ったことが事件を招き、転居させるなどして発覚を遅らせたと主張し、男の事件への関与について、両親がどう認識していたかが争点。 この日は男の両親が出廷し、尋問で「(男が)将太さんを刺したかもしれない」と事件への関与をほのめかしたことを問われると、「近所で起きた事件で頭の中が混乱し、現実と妄想の区別ができなかった」と述べた。 捜査報告書などによると、男は事件直後、当時生活していた神戸市北区から、かつて居住していた千葉県浦安市への転居を申し出たことが明らかになっている。 原告の代理人弁護士は、男が事件の2か月前、交際相手の女性をドライバーで刺したり、電車内で乗客に暴力を振るったりしており、暴力性がエスカレートしていったことを強調した。 そのうえで両親に対して、「親として(男と)向き合い、監督責任を果たしていれば、このような殺人行為を防げたのではないか」と指摘したが、両親は「(男は)交際相手に対する憎しみがあったが、それ以外の第三者に対しては、殺意はなかった」という趣旨の発言を繰り返した。 さらに父親が、警察での事情聴取で「(男は)カッとなると見境(みさかい)がなくなる」「自分が犯人かも知れないと聞いた」と供述したことについて、「(取り調べた警察官から)誘導され、『それでは筋が通らない』と決めつけられた」と反論し、供述調書と事実関係の食い違いを強調した。 また母親は「事件の翌日、男に『(事件に関わっていないと)信じていいか』と聞くと『いい』と答えた」と述べ、弁護人から「当初から事件への関与を疑っていたのではないか」と指摘される場面もあった。 閉廷後、将太さんの父親・敏(さとし)さんは会見で、「男も両親も、まだ事件と向き合っていない。当時、未成年だった男に対する親としての責務は何だったのか。『なかったことにする』のが本音ではないのか。私たちが求めているのは賠償金じゃない。残された遺族の精神的苦痛をわかってほしい。私はこれまで命を削ってきた。15年前の生活と将太を返してほしい。責任の所在がどこにあるかを考えてほしかった」と怒りをあらわにした。 事件は22年10月4日夜に発生。将太さんが突然、面識のない男にナイフで複数回刺され死亡した。10年10か月間の逃亡の末、2021年8月4日に逮捕された男の刑事裁判は今年(2025年)10月14日、最高裁が男の上告を棄却し、懲役18年の実刑が確定した。 2023年6月の刑事裁判で、男は殺意を否定し、法廷で遺族と目を合わせることはなかった。いまだに遺族のもとには、正式な謝罪の言葉は届いていない。 次回の裁判は11月12日。男(実刑確定につき収監予定)に対する尋問が非公開で行われる。

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