NBAは悲劇的な朝を迎えた。10月24日(現地時間23日)、FBIは違法賭博の一斉摘発を行い、30名以上を逮捕。そこにはテリー・ロジアー(マイアミ・ヒート)やポートランド・トレイルブレイザーズを指揮するチャウンシー・ビラップスヘッドコーチの名前があり、SNS上では両名が実際に連行されている様子も確認されている。 NBA関係者からのもう1名の逮捕が、デイモン・ジョーンズ(元クリーブランド・キャバリアーズほか)だ。『The Athletic』によると、リーグで11シーズンを過ごしたジャーニーマンは2022−23シーズン期間中、レブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)と個別にワークアウトを行い、同選手に関する非公開情報をギャンブラーに漏洩した疑いが持たれている。 ジョーンズはキャリア平均約40パーセントのスリーポイント成功率を誇る控えシューターであり、その陽気な性格からチームのムードメーカーでもあった。引退後はコーチに転身し、2016年にはアシスタントコーチとしてレブロンと共にクリーブランド・キャバリアーズのリーグ優勝を経験した。 FBIの資料によれば、ジョーンズは2022−23シーズン当時、レイカーズ職員ではなかったものの、レブロンと親しい間柄にあったことから、チーム関係施設への限定的なアクセスが許可されていたという。試合前の数時間にわたってレブロンの個人練習をサポートしていたほか、ロッカールームや移動用チャーター機、宿泊先ホテルへの出入りまでも許されていたようだ。 そして、このレブロンとの関係性やレイカーズとの距離感を利用し、ジョーンズはレブロンおよび他選手の出場可否、あるいは試合中に途中退場する可能性など、球団の非公開情報を売却して利益を得ようとしていたとされている。 起訴状では、2つの試合に言及されている。1試合目は2023年2月10日(同9日)に開催されたミルウォーキー・バックス対ロサンゼルス・レイカーズで、ジョーンズは「ある選手が欠場する。バックスに賭けろ」とのメッセージを共犯者に送ったとされている。この試合には八村塁やアンソニー・デイビスらが出場していたが、レブロンは欠場。結果は115対106でバックスの勝利となっている。 もう1試合は2024年1月16日(同16日)のゲームだ。この日はオクラホマシティ・サンダーとの対戦があり、ジョーンズは試合前に別のレイカーズ主力選手に関するケガの情報をチームトレーナーから入手し、それを共犯者に流したとされている。共謀者はレイカーズの敗戦に10万ドル(約1500万円)を賭けたが、公式発表で該当の選手は出場可能となり、試合にもレイカーズが勝利。これにより、共謀者はジョーンズに対して情報料の2500ドル(約40万円)の返還を要求したという。 さらに、ジョーンズはビラップス監督と同様の不正ポーカーにも関与しており、通信詐欺共謀罪とマネーロンダリング共謀罪でそれぞれ2件の罪で起訴されている。一連の事件には「ラ・コーザ・ノストラ」と呼ばれるアメリカ国内のイタリア系マフィアによる組織犯罪ネットワークが関与。FBIは、彼らがニューヨークやフィラデルフィア、シカゴ、デトロイトなど、NBA球団が本拠地を置く都市で支配力があるとしている。 なお、ジェームズ本人はジョーンズが自身の出場情報を共有していた事実を全く知らず、レイカーズは『The Athletic』の取材に対しコメントを控えている。 全世界が報じたNBAの衝撃ニュース。リーグはスポーツベッティングとの関わり方を問われている。 文=Meiji