「すべてを捨てて会いに行くよ」 自殺願望のある女子高生Aさん(当時15歳)を「いっしょに死のう」と連れ出し、4日間にわたって連れ回した住中隼(すみなか・じゅん)被告(41)に判決が下された。住中被告は未成年者誘拐と不同意性交等の罪に問われていた。 10月27日、千葉地裁で開かれた判決公判で、水上周裁判長は「身勝手で自己中心的な犯行動機に酌むべきものはない」として「懲役5年」(求刑6年)を言い渡したのだった。 住中被告とAさんがチャットアプリで知り合ったのは今年の4月上旬。高校生活や家族などの人間関係に悩みを抱え、「死にたい」と漏らすAさんに、住中被告は「いっしょに死のう」と持ちかけ、2人で死ぬ予定になっていたという。 住中被告も職場や家庭での人間関係に悩み、「いつ死んでもいいや」と思っていたそうだ。Aさんとは恋愛関係にあったと主張し、公判ではAさんとのことをこのように述べていた。 「(Aさんは)自分が弱音を吐ける場所という認識でした。いずれは結婚したいと思っていて、高校を卒業するタイミングで何かしらの動きを取ろうと考えていたのです。私は『死ぬまでいっしょだよ』という意味で『いっしょに死のう』と言っていました」 しかし、「具体的に離婚に向けての動きはしたのか?」という質問には、「子どもの学校のことなど、一段落したら妻に切り出そうと考えていた」と答えている。 ◆自殺を諦めたあとも避妊はしなかった そして5月13日の朝7時ごろ、つないだままにしていたLINE電話でAさんが「もう嫌だ、死にたい」と訴えると、住中被告はAさんに冒頭のように「すべてを捨てて会いに行くよ」と告げ、職場に休みの電話を入れると、すぐさま待ち合わせ場所の秋葉原駅に新幹線で向かったのだった。 Aさんと合流した住中被告はそのまま仙台に入って宿泊し、翌14日に青森に移動。そして15日の午後、自殺場所と決めていた城ヶ倉大橋(青森県青森市)を訪れ、欄干から下を見下ろし、いよいよ飛び降りようとしたときのことを、住中被告は公判の中で嗚咽しながらこう話していた。 「私は、下を見下ろしてもまったく怖さを感じませんでした。しかしAさんは『怖い』と言ったのです。Aさんが『死にたくない』と言っていたので、一度、駐車場のほうに移動しました。そうしたら、Aさんは『死ねなくて、ごめんなさい。死ぬ気がなくて、ごめんなさい』って。私は『(Aさんが)そう思ってくれたことで、こうやって生きてるんだよ』って言いました」 2人は城ヶ倉大橋を離れ、その日は青森市内で宿泊。そして翌16日の午後、住中被告は青森市内で逮捕された。 住中被告はAさんを連れ回している間、宿泊したホテルで避妊をせずに性行為に及び、自殺を諦めたあとも、やはり避妊をせずに性行為に及んでいた。 水上裁判長は、量刑の説明のなかで住中被告が避妊しなかったことにも触れていた。 「被告人は性的自己決定をするには未熟で、判断能力の不十分な被害者に対し、性欲のおもむくままに性交を重ねている。被害者が避妊具をつけないことに抵抗感を示していたにもかかわらず、被告人は『どうせ死ぬのだから、避妊はしなくていい』などと言い、避妊せずに性交に及んでおり、被害者の性的自由に対する侵害の程度も大きく、今後の被害者の健全な成長に与える悪影響も懸念される」 ◆「反省しているようには見えませんでした」 逮捕直後は「この4日間は否定したくない。後悔はしてない、反省していない」などと供述していた住中被告。その後、独房で1人「自分と向き合った」結果、「『いっしょに死ぬよ』と言ったことで、Aさんの自殺願望を強めたのではないか」との考えに至ったという。 公判で住中被告は、何度も「私が間違っていたと思います」と謝罪の言葉を口にしていた。 しかし、法廷で反省の弁や謝罪の言葉を口にした住中被告の姿は、Aさんの母親の目にはそのまま受け取ることはできなかったようだ。意見陳述書には、次のようにつづられていた。 「法廷では、一応、反省している旨は述べたものの、私には真摯に反省しているようには見えませんでした。被告人の言葉は、自分が悲劇的な立場にあり、まるで物語の主人公かのように述べているふうに聞こえました」 被告人質問の中で、被害者代理人弁護士の「Aさんに対しての恋愛感情は続いてるのか?」という質問に、小さく声を絞り出すように「思ってます」と答え、「私のほうからは一切連絡しないと誓います」と続けた住中被告。しかし、「Aさんから連絡があったらどうするのか?」と問われると、無言で返したのだった。 心のどこかでは、Aさんから再び連絡があることを期待しているのだろうか。もしかしたら、住中被告は、いまだにあの4日間の続きを夢みているのかもしれない。 今後、控訴しなければ、住中被告には刑務所での生活が始まることとなる。 ※「FRIDAYデジタル」では、皆様からの情報提供・タレコミをお待ちしています。下記の情報提供フォームまたは公式Xまで情報をお寄せ下さい。 情報提供フォーム:https://friday.kodansha.co.jp/tips 公式X:https://x.com/FRIDAY_twit 取材・文:中平良