ルーシー・フレミング記者、リチャード・カゴエ記者 世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は29日、内戦が続くアフリカ・スーダンで、準軍事組織「迅速支援部隊(RSF)」が西部の都市エル・ファシールを掌握した後、主要病院で数百人の民間人を殺害したとの報告があると述べた。 テドロス氏は、「病院で460人が殺害されたという報告に愕然(がくぜん)とし、深く衝撃を受けている」と述べた。 これに先立ち、スーダン医師ネットワークは、RSFの戦闘員が28日に「サウジ病院内で見つけた全員を冷酷に殺害した。患者、付き添い人、その他のそこにいた人たちだ」と発表した。同団体は死傷者数を示していないが、市内の医療施設が虐殺現場になったと述べた。 スーダン医師ネットワークはまた、RSFが医療従事者6人を拉致したと非難した。RSFは、15万ドル(約2280万円)を超える身代金を要求していると報じられている。 28日に発生したサウジ病院への攻撃については、地元の活動家団体「エル・ファシール抵抗委員会」も報告しており、事件後には「恐ろしい沈黙が広がった」と述べている。 RSFとスーダン軍は、2年以上にわたって激しい内戦を続けている。 RSFは、スーダン軍が北ダルフール州で唯一掌握していたエル・ファシールを、18カ月にわたって包囲。市内では飢餓と激しい爆撃が続いていた。同市は26日にRSFが握った。 2023年4月に紛争が勃発して以来、RSFおよび同盟する民兵組織は、非アラブ系住民を標的にしていると非難されているが、RSFはこれを否定している。 エル・ファシール陥落を受けて、国連やロビー団体、援助団体などは、同市に閉じ込められている、多くが非アラブ系とされる推定25万人の人々の安否を懸念している。 現在、通信が遮断されたことで、現地で何が起きているのかを確認することが困難になっている。 BBCヴェリファイ(検証チーム)は、過去数日間にソーシャルメディアに投稿された新たな映像を分析している。その中には、RSFの戦闘員が非武装の人々を処刑する様子が映っているものもある。 ■「人道危機が闇の中で進行」 現地からの報告が困難な状況の中で、援助団体は、エル・ファシールおよびその周辺での壊滅的被害の全容が、ようやく明らかになり始めているとしている。 一部の人々は、エル・ファシールから西へ約60キロの地点にあるタウィラの町まで、危険な道のりを越えて逃れており、市内で直面した極度の暴力について語っている。 BBCアラビア語の番組「スーダン・ライフライン」の取材に応じた男性は、「26日の砲撃はとても激しく、私たちはエル・ファシールを逃れるしかなかった」と語った。 「RSFはその途中で私たちを撮影し、なぐり、侮辱した。それから持ち物を奪われた。たくさんの人が拘束されて、解放のために身代金を要求された」 「なかには後から処刑された人もいた。移動の最中に大勢が逮捕されたし、飢えと渇きにひどく苦しめられた」 元国連人道問題担当高官のヤン・エゲランド氏はBBCに対し、状況は壊滅的だと語った。 「数カ月にわたる困窮、飢餓、医療の欠如の上に、さらに虐殺が重なっている」と同氏は述べた。 「今、ここは地球上で最悪の場所だと思う。地球上で最大の人道危機が、実質的に闇の中で進行している。スーダンで起きていることに対する関心があまりにも少なすぎる」 WHOのテドロス氏は、内戦開始から今回のサウジ病院への攻撃までの間に、医療施設への攻撃を185件、WHOとして確認していると指摘。死者は1204人に上っているとし、こう訴えた。 「医療へのすべての攻撃は、即時かつ無条件に停止されなければならない。すべての患者、医療従事者、医療施設は国際人道法の下で保護されるべきだ。停戦を!」 RSFがエル・ファシールを掌握したことで、スーダン国内は事実上分断された。RSFは現在、西部ダルフール地域の大部分と隣接するコルドファンの広範囲を支配している。一方、スーダン軍は首都ハルツームおよび紅海沿岸の中部・東部地域を管理下に置いている。 両勢力は、2021年のクーデターで共に権力を掌握し同盟関係にあったが、国際的な支援を受けた民政移行計画をめぐって対立するようになった。 (英語記事 Sudanese RSF militia killed 460 people at el-Fasher hospital, says WHO)