人生が激変したトルコの元記者 新聞社閉鎖、投獄、密出国…強権体制下の流転の日々 千夜一夜

筆者が駐在するエジプト・カイロにトルコ人の知人(56)が所用のためやって来るというので、10月上旬に久しぶりに会った。 彼はトルコの大手紙「ザマン」の記者だった。同紙は2016年7月にトルコで起きたクーデター未遂事件の後、首謀者とされた在米イスラム指導者と関係があるとして、エルドアン政権によって閉鎖された。彼も他の同僚とともに逮捕され、獄中で約3カ月を過ごした。 知り合ったのは釈放後の17年4月。大統領権限を強化する憲法改正の是非を問う国民投票でトルコに出張した際、取材を手伝ってくれた。職を失って将来の見通しが立たない-と目を潤ませたこともあった。 同年10月、彼は欧州に向かった。「反体制派のレッテルを貼られ、出国する許可など得られるわけがない。だから、夜陰にまぎれてボートで国境の川をギリシャ側に渡った」。その後、ドイツに居を構えて言葉を勉強し、今は翻訳者として生計を立てている。 トルコでは今年3月、最大都市イスタンブールの野党所属の市長が汚職容疑で逮捕された。エルドアン大統領の最大の政敵と称される。「自らの権力基盤を脅かすとみなした者はみな排除する」。エルドアン氏の強権を熟知する彼の評価だ。弾圧でトルコメディアの9割は政権寄りになったとされる。(佐藤貴生)

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