12月4日、千葉県警浦安署から警官に連れられて姿を現したのは短髪の若い男だった。最初は緊張した表情だったが、階段を下りながら男は上目遣いにカメラを見つめると、なんと、笑みを浮かべてにこやかに手を振ってみせたのだ。バスに乗る直前にも制止する警官2人の肩越しに両手を振り続けていた。なぜ笑顔だったのだろうか──。 千葉県浦安市の「東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ」で、懇親会の最中に刃物を持ち込んで脅したとして、中国籍の自称自営業・姜春雨(ジャン・チュンユー)容疑者(34)が暴力行為等処罰法違反(脅迫)の疑いで逮捕された。 千葉県警によると姜容疑者は12月1日午後8時ごろ、浦安市舞浜の同ホテル内の宴会場で、懇親会に参加していた会社員の男性(31)に刃物を向け、脅した疑いだ。 「事件が起きた宴会場では、ある会社の懇親会が行われていました。突然現れた姜容疑者は、出席者の間を回って、中国語で書かれた紙をテーブルごとに配り始めます。参加者の1人だった男性が止めに入ると、リュックサックから刃渡り約20センチの中華包丁のような刃物を取り出し中国語で、『それ以上近づいたらぶっ殺すぞ』などと恫喝したのです。姜容疑者はこの会社の元従業員で、何らかのトラブルで辞めていたといいます。 事件後にホテルから立ち去った姜容疑者はJR舞浜駅から電車で逃走したようです。千葉県警は防犯カメラ映像などから行方を追い、翌2日に神奈川県川崎市内の自宅前の路上で姜容疑者の身柄を確保しました」(全国紙社会部記者) 取り調べに対し姜容疑者は「会社への抗議文を配っていたところを止められたので包丁を出した」などと説明し、「刃物を向けて脅したつもりはない」と一部容疑を否認しているという。 ◆「働き方の『土台』が教えられていない 姜容疑者と会社の間にどんなトラブルがあったのかは明らかになっていない。職場でのトラブルといえば、12月5日には千葉県いすみ市で中国籍の劉柯容疑者(39)が同僚の女性(58)の顔などを刃物で複数回刺す事件が起きている。 「劉容疑者はその場で通報され、殺人未遂の疑いで逮捕。その後、女性の死亡が確認されたため、殺人に容疑が切り替わりました。『家から持ってきたナイフで刺したことに間違いありません』と容疑については認めているそうです。事件当時、2人は会社内の部屋で面談中だったといい、警察は2人の間に何らかのトラブルがあったとみて調べています」(同前) 犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は、外国人の職場トラブルの理由について次のように解説する。 「何人だから、ということではなく、日本人だって職場のトラブルは起こします。しかし、日本では、雇用主や上司が強い立場にあり、多少の無理や理不尽も『仕事のうち』として受け止めることに慣れています。もちろんパワハラやセクハラは論外ですが、職場のトラブルは避けようという意識があります。 しかし、海外で育った外国人労働者はこうした風土には慣れておらず、権利意識が先に立って、不平や不満があると率直に口にします。こうした感覚は、職場トラブルを避け、多少のことは我慢するという日本の職場では周囲と衝突しやすいのです。 技能実習制度の場合は渡航前に日本語教育が行われますが、日本の職場で求められる暗黙のルールや働き方の『土台』までは十分に教えられていない。その結果、『仕事がきつい』『叱られた』といった不満が表面化し、トラブルに発展してしまうケースが後を絶たないのです」 今回の事件も、そうした不満が爆発した末の行動だったのかもしれない。だが、家族連れも多い公共の場所で、刃物を手にするような行為は、「職場のトラブル」にとどまらず、もっと大きな惨事を招いた可能性もある。 今後、外国人労働者が増えていけば、日本人と外国人の問題だけでなく、外国人同士のトラブルも多くなるだろう。彼らへの向き合い方があらためて問われている。 ※「FRIDAYデジタル」では、皆様からの情報提供・タレコミをお待ちしています。下記の情報提供フォームまたは公式Xまで情報をお寄せ下さい。 情報提供フォーム:https://friday.kodansha.co.jp/tips 公式X:https://x.com/FRIDAY_twit