生後11カ月の長女の頭に強い衝撃を与える何らかの暴行を加えて死亡させたとして傷害致死罪に問われた福岡県糸田町の無職、松本亜里沙被告(29)は11日、福岡地裁(鈴嶋晋一裁判長)で開かれた裁判員裁判の初公判で「故意に暴行など振るっていません」と起訴内容を否認した。弁護側も、被告にてんかん発作が起きたことで長女を落とすなどした可能性があるとして無罪を主張した。 検察側は冒頭陳述で、長女が意識不明の状態で自宅から病院に搬送された際、被告は救急隊員らに「座らせて遊ばせていたら横に倒れた」とは話したが、てんかん発作についての言及はなかったと指摘。被告は妊娠中で情緒不安定だったとし、長女に骨折や打撲痕があった状況からも「暴行が原因と考えられる」と主張した。 一方、弁護側は「被告は台所でミルクを作っている時に物音がして振り返り、長女が倒れているのに気付き、自ら119番した」と主張。被告には高校生の頃からてんかんの発作があったとし、「今回の事案も発作で記憶がない時に抱いていた長女を落とした可能性が否定できない」と指摘した。被告はてんかん発作について当時、警察官にも説明していたと反論した。 起訴状によると、松本被告は2018年7月28日午前7時15分~11時50分ごろ、当時住んでいた川崎町の自宅で、長女の笑乃(えの)ちゃんの頭部に強い衝撃を与える何らかの暴行を加え、急性硬膜下血腫などで死亡させたとしている。 県警などによると、松本被告は同日正午ごろ、「娘の様子がおかしい」と119番。笑乃ちゃんは意識不明の状態で病院に搬送され、3日後の31日に亡くなった。医師から「虐待による乳幼児頭部外傷(AHT)の疑いがある」との指摘を受け、県警は3年半あまりの捜査の末、22年2月に松本被告を傷害致死容疑で逮捕。争点を絞り込む公判前整理手続きも長期化し、起訴から初公判まで異例の約3年8カ月を要した。【森永亨】