多様性の都ニューヨークに、20世紀以降では最年少にして初物ずくめの市長が誕生する。11月4日の市長選で50%超の票を獲得したゾーラン・マムダニだ。1991年10月生まれの34歳。南アジア系(両親がインド系)として、アフリカ出身者(5歳時までウガンダ在住)として、そしてイスラム教徒として初の市長となる。 ニューヨーク市は民主党の牙城だが、今回は民主党が分裂した選挙だった。党の予備選で敗れた前州知事のアンドルー・クオモが無所属で出馬し、混戦が予想されていたが、結果としてクオモの得票率は41%強にとどまった(ちなみに共和党候補は7%強)。 マムダニは自称「民主社会主義者」。民主党内でも最左派に位置し、富裕層への課税強化を公約し、市営バスと保育の無償化を掲げている。 対外的にはイスラエルのガザ戦争に強く反発し、同国のベンヤミン・ネタニヤフ首相がニューヨークに来たら国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状を執行すると息巻いている(ただしアメリカ政府はICCに加盟していないので、市長にそんな権限はない)。 大金持ちが多くユダヤ系の住民も多いニューヨーク市で、こんな極左の人物が勝てたのはなぜか。 まず、ライバルのクオモ候補に付きまとう汚職やセクハラの疑惑が追い風になった。物価や家賃の高騰など、生活に密着した問題に焦点を絞ったマムダニの選挙戦術も有効だった。インスタグラムなどの動画系SNSでは圧倒的な存在感を示し、自分と同じ若い世代の共感を得てもいた。