写真の中の母、ともに歩んだ父 息子の26年間 名古屋女性殺害事件

26年前、あの部屋にいた。記憶はない。でもずっと胸の中に事件を抱えていた――。 名古屋市西区のアパートの一室で1999年、住人の高羽(たかば)奈美子さん(当時32)が殺害された事件。発生から26年となった13日、息子の航平さん(28)が東京都内で朝日新聞の取材に応じた。 この事件では、愛知県警が10月31日に容疑者の女を殺人の疑いで逮捕。しかし、動機など明らかになっていない部分も多い。航平さんも「まだわからないことが多く、煮え切らない思いもある」と複雑な心情を語った。 事件は土曜日の昼過ぎに起きた。奈美子さんが室内で亡くなっているのを訪ねてきた近所の人が発見。当時2歳だった航平さんは、部屋の中で傍らに座っていたという。 航平さんに事件当時の記憶はない。奈美子さんのことも、映像や写真で見る姿しか覚えていない。それが寂しい。 少し大きくなってからは、祖母や父が奈美子さんの話をしてくれた。でも、「生んでくれた母のことを、人からの伝聞でしか感じられない。他の人と比べるとつらい部分でした」と思い返した。 父親の悟さん(69)は事件解決を願い、現場のアパートの部屋を借り続けてきた。殺人事件被害者遺族の会「宙(そら)の会」のメンバーとして、2010年の殺人事件などの公訴時効の廃止にも尽力。航平さんも会のメンバーとして一緒に活動してきた。 「(悟さんは)すごくまじめ。ちょっとかたいなと思う時もある」と笑う。でも、「芯が通っていてぶれないところを尊敬しています」。 就職を機に実家を離れた。いまの東京の部屋の棚の上にも、奈美子さんの写真が飾られている。ほほえみかける母の姿。二度と会うことはかなわない。 「26年、事件を抱えて生きてきた。真実を知って向き合うことが人生においてのひとつの区切りになると思う」 容疑者には、遺族みんなに対し正直に真実を語ってほしい。「真実を知って、次に進む区切りをつけたい」(奈良美里)

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