自民の原点、国民政党遠く 結党70年 政治とカネ、なお不信 保守回帰、党勢回復狙う

自民党は15日、1955年の結党から70年を迎えた。節目の今年は衆院に続き参院でも少数与党に転落し、公明党との四半世紀に及ぶ連立も解消。戦後ほぼ一貫して与党だった自民が政権を失いかねない危機だ。高市早苗首相は、長期政権を築いた安倍晋三政権にならい、保守路線への回帰で党勢回復を目指すが、「政治とカネ」で失墜した信頼の回復は容易でなく、結党以来掲げる「国民政党」に立ち返る道筋は描けていない。 「『政治は国民のもの』で始まる立党宣言。国民政党としての原点に立ち返る」。首相は結党70年に合わせ15日に公開したビデオメッセージで時折笑みを見せながら、こう強調した。笑顔とは裏腹に、首相が率いる自民は今、過去の短い2度の下野に匹敵する苦境に立たされている。 要因は党の体質的な問題と言える「政治とカネ」だ。2023年末に表面化した党派閥裏金事件では、衆参政治倫理審査会でも実態を解明できず、改正政治資金規正法も「抜け穴」が残ると指摘された。早期の幕引きを狙う姿勢が国民の不信を招き、昨年10月の衆院選、今年7月の参院選で大敗。衆参両院で少数与党となるのは結党以来初めてとなった。 企業・団体献金の規制強化などを求める公明の連立離脱も招いた。首相は新たに日本維新の会と連立を組んだものの、閣外協力で少数与党の状況も変わらない。 自民は立党宣言で「広く国民大衆とともにその責務を全うせんことを誓う」とうたい、自らを「国民政党」と位置付ける。中道路線を掲げ、全国の業界や地域の団体から民意をくみ取り、政権与党の強みを生かして利益を分配してきた。 強固な選挙地盤を築く半面、「政治とカネ」を巡る問題は尽きなかった。76年のロッキード事件では田中角栄元首相が東京地検特捜部に逮捕され、89年にはリクルート事件で竹下登内閣は総辞職に追い込まれた。 高度経済成長の終焉(しゅうえん)に伴い、補助金や公共事業を通じて地方や業界団体に利益を配分する仕組みが限界を迎え、集票力に陰りが見え始めると、自民は公明などとの連立で組織力を補い、政権を維持。中道から保守路線へとかじを切った安倍氏が改憲や安全保障などで野党側を揺さぶり「1強多弱」の長期政権を築いた。 だが、安倍氏を支えた岩盤保守層も盤石ではなかった。中道路線の石破茂政権下で行われた衆院選と参院選で大敗。党関係者は「保守層の底が抜けて参政党に流れた」とみて、10月の総裁選では安倍氏の後継を自任する高市氏を選出。流出した保守層の奪還に躍起だ。 ブレーキ役だった公明が連立離脱し、維新の与党入りで「右寄りの政策を進めるアクセルとアクセル」(自民参院幹部)となった高市政権。党内には、さらに保守的志向を強めるとの見方は強い。政権中枢と距離を置く自民重鎮はこう嘆いた。「幅広さがあるのが自民党の良さだ。国民政党であることを忘れている人が多い」

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