東大病院の医療機器選定を巡る汚職事件で、逮捕された同病院の医師松原全宏容疑者(53)が、贈賄側の医療機器メーカー「日本エム・ディ・エム」(東京都新宿区)に対し、現金の授受に利用した「奨学寄付金」の申込書類への記載内容を指示していたことが20日、警視庁捜査2課への取材で分かった。 同課が詳しい経緯を調べている。 奨学寄付金制度は、寄付者が申込書に宛先や金額などを記載して大学に提出し、審査が通れば、振り込み依頼書が寄付者に送られる仕組み。 そのため同容疑者は、寄付の名目となる研究内容などの書き方を同社に指示していたとみられる。同社は、記載した研究が実際に行われているかは把握していなかったという。 同病院で使われる医療機器は登録制で、一つ登録されると一つ減らす方式となっている。2019年春ごろ同社が同容疑者に寄付を提案。同容疑者は同年9月、それまで使用されていなかった同社製品の登録を病院に申請し、2カ月後に登録された。 同容疑者は、21年9月と23年1月ごろ、同社の医療機器を優先的に使用するなどの便宜を図る見返りに、計約70万円を受け取ったとして、収賄容疑で逮捕された。 同課は今年7月、医療機器選定を巡る贈収賄事件で、長野県内の公立病院の整形外科医2人と、今回とは別の同社元社員ら3人を書類送検=在宅起訴=したが、捜査の過程で今回の事件が発覚した。 東大病院は同容疑者の逮捕を受け、「誠に遺憾であり、心より深くおわびする」などとするコメントをホームページで発表した。診療体制などに影響はないという。