警察官に必要な技術や知識を身につける警察学校。新人警察官たちは、何を学び、どんな訓練を積んでいるのか。香川県警が報道機関向けに実施した体験入学に、新人記者(24)も参加した。 体験入校は、残暑が続いていた10月上旬。香川県警察学校(高松市郷東町)で、4月に入校した男性10人、女性6人の初任科生16人の教練に参加させてもらった。 警察学校の朝は早い。午前6時半、最初のメニューは約3キロのランニングだ。声を出しながらグラウンドを周回する。軽いジョギングと聞いていたが、日頃、走っていない記者にとってはかなりのハイペース。2周目には遅れ始めた。 リタイアしよう――。そんなことを思っていたところに、教官から「それじゃ(被害者を)助けられません」「しんどくないよ、被害者の方がしんどいよ」と声を掛けられた。 県民を守ることを第一に考えている姿勢に感動した。初任科生たちより3周ほど遅れたが、なんとか走り切れた。いきなり、ヘトヘトになった。 ストレッチをして体力の回復を待っていると、スピーカーから耳慣れた音楽が流れてきた。人気ロックバンド、Mrs. GREEN APPLEの「ケセラセラ」。警察学校の厳格なイメージとは対極の、軽快な音楽。教官が初任科生を励ますために流しているそうだ。折れそうになっていた心に、いつもより歌が響いた。 7時半、食堂で待望の朝食をとった。白米、メンチカツ、切り干し大根、みそ汁。少なくない量の食事を、初任科生たちは10分ほどで食べ終えた。「さっさと食べて、さっさと次の行動に移る」のが鉄則だという。 午前中の締めくくりは「警備実施」だ。約5キロの盾を持ち走り込む。さらに、教官がバットでたたくのを盾で受け止めるメニューもあった。体力が削られ、授業が終わる頃には立ち上がれなくなってしまった。 午後も刑法の座学や、逮捕術など多くのメニューが待っていた。全てが終わったのは午後5時15分だった。 「やっと終わった」。足が悲鳴をあげていた記者をよそに、初任科生は追加のランニングに向かっていった。 ■男女同一の基準と女性への配慮 わずか1日の体験入校だったが、印象に残ったのは性別に関係なく同じメニューをこなしていたことだ。走る距離も、装備の重さも同じ。出される食事の量も差はない。北野正史副校長(53)は「警察官には一定の能力が求められ、そこに男女は関係ない」。 ただ、配慮はある。 生物学的に身体能力に差があるから、評価基準は男女で違う。月経の時には授業を休める。もちろん、それで評価が下がることはない。 県警によると、採用試験の受験者は10年前の570人に対し、昨年度は255人。特に女性の受験者は10年前に104人いたが、昨年度は56人と減少傾向が続いている。 警察庁の発表では、今年度当初の女性警察官の人数は3万1667人で、全体の12.0%。四国での割合は徳島の12.9%が一番高く、愛媛と高知が12.2%。香川県警は11.4%で、来年度当初にはおおむね12%まで引き上げたい考えだ。 各警察署でも女性が働きやすいようトイレや専用宿直室などハード面の整備が進んでいる。女の容疑者の身体検査や女性被害者に寄り添うなど、女性警察官の力が必要な場面は少なくない。 姉に憧れて同じ警察官の道に進んだ穴吹妃奈巡査(19)は「地域の方々から信頼される温かくて頼もしい警察官になりたい」と話す。 初任科生と過ごしたこの時間を糧に、私も努力を重ねていきたい。(斉藤夏音)