つきまといや待ち伏せなどの嫌がらせを禁止するストーカー規制法の施行から、きょうで25年になる。 悪質な事件の広がりに法改正を重ね、規制を強化してきたが、深刻な被害が続いている。 規制法違反の摘発件数は昨年に約1300件、つきまとい行為などをやめさせる行政措置「禁止命令等」も約2400件と、いずれも過去最多に上った。 助けを求める被害者に対し、警察の対応が不十分で死傷に至る事件が相次いでいる。危険の「芽」を摘む警察や行政の組織的な対策を強めたい。 新たな被害拡大を防ぐため、政府は今国会に4度目の法改正案を提出した。 スマートフォンで追跡できる「紛失防止タグ」を使い、相手の位置情報を無断で取得する行為を規制することが柱だ。 貴重品などの管理用だが、近年はストーカー目的で取り付けられる被害が増えている。 悪用事案の相談件数は昨年に370件と、前年比で倍増近くになった。2022年には滋賀県内で、タグを知人女性の車に取り付けて追跡し、自分の車を衝突させて連れ去った男が現行犯逮捕される事件も起きた。 こうした電子機器や交流サイト(SNS)の普及による新たな手口に、法規制が後手に回っているのは否めない。 13年の法改正では、神奈川県での女性刺殺事件を受け、執拗(しつよう)なメール送信をつきまとい行為に追加。16年には東京都で音楽活動をしていた女性の刺傷事件などから、SNSを用いたメッセージの連続送信を規制した。 21年には衛星利用測位システム(GPS)機器を無断で取り付ける行為を禁じたが、タグは対象外となっていた。被害のリスクを見逃さない法制と運用の実効性が問われよう。 川崎市で昨年末、元交際相手からのストーカー被害を訴えていた女性が殺害された事件では、危険性を軽視した警察の対応不備が大きな問題となった。 神奈川県警の検証では、被害者が別れと復縁を繰り返した経緯もあり、SOSの切迫性を過小評価し、必要な捜査態勢を取れなかったとした。警察庁は、専門性の高い本部担当者と地域署の連携強化を求めている。 今回の改正案には、被害者から申し出がなくても、加害者に警察の職権で行政指導の「警告」を出せる対応も盛り込んだ。 被害者が報復を恐れ、ためらう場合があり、加害側への迅速な取り組みで行為の抑止につなげる狙いだ。 ストーカー問題に取り組むNPO法人は、DV(配偶者・恋人間の暴力)に対応する自治体の支援センターなどとの連携が重要と指摘している。 被害者の心身両面の支援とともに、行為を繰り返す加害側に対する医療・福祉や、更生プログラムなども拡充したい。