詐欺電話のやり取りで記者スイッチが入った…「両国発」

◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」 3か月ほど前のこと。取材現場に向かっていると、スマホが震えた。090から始まる見知らぬ番号からの着信。「何か取材依頼かな?」と思い、通話ボタンを押した。 「有野博幸さんですか? 埼玉県警です」。低い男の声。ドキッとして「私、何かやりましたか?」と尋ねると「特殊詐欺事件の重要参考人になっています」。寝耳に水だ。身に覚えがない。頭をフル回転して人生を振り返っても、詐欺に手を染めた記憶はない。 動揺していると「有野博幸さん名義のキャッシュカードが押収されています。今から埼玉県警に来てください」と出頭要請された。仕事があるので難しいと伝えると「都合の良い日を教えてください」。あまり人を疑わない性格の私でも、さすがに「これは、おかしい」と思い始めた。 そこで記者としてのスイッチが入った。電話取材では、短時間でも聞き逃しがないよう念入りに確認することが鉄則だ。「名前をフルネームで教えてください」「どんな漢字ですか?」「部署はどちらですか?」「用件を詳しく教えてください」など、矢継ぎ早に質問した。だんだん返答があやふやになり、最終的に黙ったので、こちらから「もういいですか? 切りますよ」と通話を終えた。 不安だったので、警察相談窓口の「♯9110」に電話して一部始終を説明した。すると「それ完全に詐欺の電話です。無視してください」と教えてくれた。警察が携帯電話から捜査の電話をすることはないらしい。逮捕されなくてホッとしたが、詐欺組織に個人情報を握られていると思うと、何だか落ち着かない。(芸能担当・有野 博幸) ◆有野 博幸(ありの・ひろゆき)2001年入社。映画・演劇担当キャップ。報知映画賞選考委員。

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