元岡山大特任准教授のみんな議員、医学論文「改竄疑い」 告発受け本格調査

元岡山大特任准教授のみんな議員、医学論文「改竄疑い」 告発受け本格調査
産経新聞 2014年11月6日 7時55分配信

 元岡山大医学部特任准教授で、みんなの党所属の男性衆院議員(45)が筆頭著者として平成20年に発表した医学論文をめぐり、昨年12月に「改竄(かいざん)の疑いがある」との内部告発があり、岡山大が本格調査していることが5日、分かった。産経新聞の依頼で論文を鑑定した民間調査機関は「複数の画像が切り張りされた可能性がある」と指摘。議員は取材に「不正は断じてない」と否定した。

 告発したのは、岡山大薬学部長と副学部長だった男性教授2人。議員の論文を含め、20〜24年に発表された11本の論文について、画像データの捏造(ねつぞう)や改竄、流用を告発した。

 同大はこのうち議員の論文など5本について今年6月、外部の有識者を含む本調査の実施を決定。一方、両教授に対して同9月、アカデミックハラスメントなどで停職9カ月の懲戒処分とした。

 調査対象となった議員の論文は、岡山大が発見したがん抑制遺伝子「REIC」が、がんを攻撃する働きに関する研究。REICの有無による変化を比較した画像データについて、告発書は「目の粗い色を塗り込み、不都合なバンド(帯)を消しているようにみえる」などと改竄の疑いを指摘している。

 総合学術誌「サイエンスポストプリント」の竹沢慎一郎編集長が運営し、研究不正を分析する民間調査機関「捏防(ねつぼう)」が産経新聞の依頼で論文を調べた結果、「写真の中に切れ目があるようにみえ、複数の画像が切り張りされた可能性がある」と指摘。一方で「解像度の限界もあり断定はできない」とも評価している。

 文部科学省のガイドラインによると、論文不正の告発があった場合、大学は予備調査として告発の合理性の有無や検証の可否を検討。本調査すべきだと判断した場合、実験ノートの精査や論文作成者の弁明聴取などを実施する。本調査開始からおおむね150日以内に結論を出し、不正が認定された場合は公表する。

 岡山大総務・企画部は「現在、厳正に本調査を行っている。調査事項の詳細などは現時点で申し上げられない」としている。

医学論文「改竄疑い」 学長選めぐる派閥争い? 議員「肩書を利用された」
産経新聞 2014年11月6日 7時55分配信

 STAP(スタップ)細胞の研究不正疑惑が明らかになった今春以降、各地の大学で研究不正に厳しい目が注がれるようになり、不正発覚や処分が相次いでいる。ただ、今回の衆院議員の論文をめぐる告発の背景には、大学内の派閥対立を指摘する声も上がる。議員は取材に対し論文不正を真っ向から否定し、今回の告発を「大学内の権力闘争で、(攻撃材料として)国会議員としての私の肩書が利用された」と批判している。

 前薬学部長と前副学部長は今回、議員の論文だけでなく、大学病院長や副学長らが関わった論文を中心に告発した。

 議員は、今回の告発は学内の権力闘争の一環にすぎず、「新たなハラスメント(嫌がらせ)のやり口になっている。大学教授が告発を連発するのは倫理観が問われかねない」と話した。

 これに対し、前薬学部長は「『権力闘争』との批判は事の本質と深刻さが分かっていない」と反論。今年4月には、告発を取り下げるよう大学側から不当な圧力を受けたとして、副学長に損害賠償を求める訴訟を岡山地裁に起こした。大学側は9月、教員らを蔑視する表現が多数含まれるメールを所属教員全員に送るなどのハラスメント行為があったとして、前薬学部長らを懲戒処分にしたが、「報復的だ」との批判の声も上がった。

 ある大学関係者は「前回(平成25年)、前々回(22年)の学長選で病院長や副学長らは現学長を支持し、別の候補を推した前薬学部長らと対立した。背景には感情的な確執があるのではないか」との見方を示す。

 議員の論文に不正があったかどうかの真相は、現在も本調査の結果が出ておらず定かではないが、すでに“内紛”は泥沼化。前薬学部長らの懲戒処分後、指導を受けられない状況が続く学生らは「研究に専念できない」と憤りを隠せない。

 大学院で博士論文の審査を控える男子学生(27)は「大学からは『適正な教育、研究環境を確保することを約束する』とのメールが1通届いただけ。就職の内定先に状況を説明できない」と困惑している。

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