佐賀県警DNA型鑑定不正、冤罪は「なし」 警察庁中間報告

佐賀県警科学捜査研究所の元職員(懲戒免職)によるDNA型鑑定の不正を巡り、警察庁は27日、県警に対する特別監察の中間報告を公表した。不正による冤罪(えんざい)事件は生じていなかったとしたが、佐賀地検へ送致していた件数が新たに9件判明するなど、計41件について捜査や公判への影響を確認中とした。 県警はこれまで、元職員が2017~24年、鑑定を実施したように装ったり、鑑定の実施日を改ざんしたりする不正を130件繰り返したと説明。そのうえで「捜査や公判への影響はない」としていた。 特別監察では捜査・公判への影響の有無を精査。不正鑑定のうち、犯罪捜査目的が101件で、内訳は、犯人の特定・摘発72件▽変死体の事件性の判断や身元確認28件▽被害者のDNA型確認1件――だった。 そして、拘束すべきではない人を拘束したといった事例がないか調査した。中間報告では、殺人未遂や準強制性交等、ストーカー規制法違反という個々の事件名を明らかにしつつ、防犯カメラ映像や目撃証言といったDNA型鑑定以外の手段で立証するなどしたと説明。警察庁は「容疑者ではない人を捜査対象としたことはなく、無実の人を逮捕・書類送検した事例もない」と判断した。 また、これ以外に、本来なら容疑者が判明したのに鑑定不正が関係して特定できなかった事例がないかという観点での検証も必要とした。容疑者が特定されていない捜査中の事件25件と公訴時効が成立した9件については、この点は引き続き確認が必要で、保存されている鑑定の資料やデータの調査を進めるとした。 犯罪捜査目的以外では、事件性のない遺体の身元確認が19件、行方不明者の身元確認が10件だった。 一方、県警はこれまで、不正のうち佐賀地検に送致した鑑定結果は16件と説明していたが、特別監察で他にも9件あったことが判明。計25件のうち18件は、公判で不正な鑑定結果が使われていなかったが、残る7件の使用状態を地検側に問い合わせている。 警察庁は10月8日に特別監察を開始。刑事局や警察庁の付属機関の科学警察研究所のDNA型鑑定の専門家ら28人体制で、捜査への影響とともに鑑定の実施状況の技術的な確認もしている。 京都大の玉木敬二名誉教授らDNA型鑑定に詳しい外部有識者2人からも第三者の立場から意見を聴取。県警が不正だったと判断した130件以外に元職員が単独で鑑定した513件も調べる予定で、最終報告はさらに数カ月以上かかるという。【深津誠】

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