金塊密輸、過去最高値更新で活発化 税関スルーで納税免れ荒稼ぎ 中国人「指示役」関与も

警察当局が、金塊が絡む事件への警戒を強めている。警視庁は11月、密輸するなど不正に得た金塊を売却していた2つのグループを相次いで摘発。密輸により正規に輸入した場合に課される消費税を支払わずに利益を得るなどの目的があったとみられ、警察当局は、犯行グループが金価格の高騰に便乗する形で多くの利益を得ようとしているとみている。 ■刻印も書類も偽造、正規品とみせかけ売却 警視庁特別捜査課は11月、偽造刻印を施した金の延べ棒を正規品として売却したなどとして、日本人や中国人からなるグループの男女9人を詐欺などの疑いで逮捕した。金塊に施した刻印や、小売取引確認書などを偽造し、金塊を正規品と見せかけて、東京都内の買い取り業者2社に売却していたとしている。 特捜課は9人のうち、いずれも中国籍の会社役員、唐明昊容疑者(43)と楊暁東容疑者(39)が指示役とみている。楊容疑者は、金塊を売却する目的で複数の企業を管理。唐容疑者は各法人が金塊売却で得た代金を集約する会社の実質的経営者で、金塊の供給役も務めたとみられる。集めた資金は犯罪収益とみなされないように、暗号資産に換えられ、資金洗浄(マネーロンダリング)していた疑いもある。 ■振り込め詐欺で金塊だまし取られる事件も 注目されるのは、金塊の入手経路だ。特捜課によると、唐容疑者らのグループは3~7月、計約95億円相当の金塊を売却しているが、ある捜査幹部は「利益を出すためには密輸する必要がある」として、大半が海外から密輸していたと分析する。 正規ルートで海外から日本に金塊を国内に持ち込む場合、税関に申告し、消費税分を納める必要がある。そのため、金を密輸することで、消費税分の納税を免れることができ、販売時にその分の利益を得ることができるという。 ただ、一部には特殊詐欺事件でだまし取られた金塊も混ざっていたとみられる。特捜課によると、今年に入り、東京都内で発生した金塊を買わせる特殊詐欺事件を捜査する過程で、容疑者らが偽造刻印の入った金塊を販売している疑いが浮上したという。 近年横行する警察官をかたる特殊詐欺のうち、1~9月、東京都内で約2億6000万円分の被害については、被害者に一度金塊を購入させ、詐取する手口も確認されている。容疑者らがこうした事件を経て不正に得た金塊を現金化し、さらに犯罪収益であることを仮装しようとしていた可能性もある。

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