中部写真記者協会(新聞・通信・テレビの30社が加盟)は2日、優れた報道写真や映像に贈る今年の協会賞を発表した。 新聞・通信部会のグランプリに朝日新聞社の「26年間借り続けた部屋」(小玉重隆記者、溝脇正記者)が選ばれた。テレビ・映像部会はCBCテレビの「エンディングカット~理容師のおくりびと~」に決まった。 「26年間借り続けた部屋」は、全国の未解決殺人事件を扱う特集企画の一環として、名古屋市西区の女性殺害事件を追った写真だ。 名古屋本社映像報道部の小玉重隆記者と報道センターの野口駿記者は今年5月、被害者の夫・高羽悟さんが「現場検証に犯人を立ち会わせるため」、26年間借り続けてきたアパートを訪れた。小玉記者は悟さんから説明を受けながら、当時の痕跡と生活の気配がそのまま残る室内を撮影した。 10月31日、愛知県警が容疑者を逮捕。11月1日には容疑者を立ち会わせて現場検証が行われ、報道は全国的に注目を集めた。 小玉記者は「容疑者逮捕という偶然のタイミングも重なり、事件に向き合う人々の執念と報道の力を感じる機会となりました。残された生活空間は、事件の重さを静かに語っていて、遺族が背負う時間の重みを社会に伝えたかった。これからも『伝えるべき現実』を丁寧に届けていきたいと思います」とコメントした。 朝日新聞社はほかに、一般ニュース部門奨励賞に小玉記者の「99歳、能登に『帰りたい、帰りたい』」、企画部門奨励賞に小玉記者、溝脇正記者の「月夜の戦跡」が選ばれた。 受賞作を含む写真約150点とテレビニュースのダイジェスト約40本を紹介する「中部報道展」は、11~16日に名鉄百貨店本店(名古屋市中村区)の本館10階美術サロンで開催される。入場は無料。(溝脇正)