日本最大の警察組織である警視庁が揺れている。国内最大級のスカウトグループに捜査情報を漏らしたとして、地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで同庁暴力団対策課の警部補が逮捕されたのだ。 このスカウトグループ「ナチュラル」は警察庁が摘発に注力する「匿名流動型犯罪グループ(トクリュウ)」との接点が指摘されるグループ。逮捕された警部補は、このグループ側にメンバーに関する捜査情報を漏らしたとされる。 いわば、「マル暴」と呼ばれる暴力団捜査の担当刑事と組織側との癒着が明るみに出たわけだが、実はこうした「黒い交際」が発覚するのは今回が初めてではない。「反社」と「マル暴」との間の危うい蜜月関係は、これまでも連綿と続いてきた歴史がある。 【捜査員にまさかの内通者】 「組織に対する裏切り」。警視庁幹部は11月12日の逮捕を受けた記者発表の場でこう吐き捨てたという。地方公務員法違反でこの日、逮捕されたのは同庁暴力団対策課の警部補、神保大輔容疑者(43)。逮捕容疑は、捜査対象となっていた「トクリュウ」の関与が疑われる「ナチュラル」の関係者に捜査情報を漏らした疑いだ。 「神保容疑者は2023年から25年4月までナチュラルの捜査班に籍を置いていました。暴力団捜査を手掛ける、いわゆる『マル暴』になったのは2020年から。暴力団関係者と接触して情報を取るマル暴の捜査手法に順応し、その手腕が認められて捜査班に抜擢されたのです。 警視庁は衰退の一途を辿る暴力団にかわって台頭してきた『トクリュウ』の摘発に本腰を入れる警察庁の方針を受けて10月から組織犯罪対策部を廃止し、新たにトクリュウ捜査に特化した捜査部門を立ち上げたばかり。そのトクリュウの大型摘発事案の第1号になるはずだった今回の事件で身内の不祥事が明らかになったのは、捜査幹部にとってまさに痛恨の出来事だったといえるでしょう」(大手紙社会部記者) 神保容疑者の自宅への家宅捜索では、出所不明の現金900万円が押収されていたことも明らかとなっている。まさに「ミイラ取りがミイラになる」の故事を地で行く事態となったわけだが、捜査対象との不適切な関係が問題になったのは、今回の事案だけにとどまらない。 警視庁を含めた警察組織の歴史を紐解いていくと、「反社」の側に取り込まれて闇落ちしたマル暴の例は枚挙にいとまがない。 【あの地面師事件でも「癒着」】