日本で暮らしてきたクルド人の男性(トルコ国籍)が、突然トルコに強制送還された。3カ月に1度、東京出入国在留管理局(東京入管、港区)に出向いた日に、家族に連絡することもできないままだった。政府が強める「不法滞在者ゼロプラン」によるものだが、関係者からは「人権侵害だ」との声があがっている。 * * * 突然の強制送還だった。 埼玉県川口市に住むクルド人の男性Aさん(40代)の弟は今年、トルコに強制送還された。 入管施設への収容を一時的に解かれた「仮放免」の状態で、二十数年間ずっと、約3カ月おきに東京入管に出頭していた。この日もいつものように入管に出向いたが、そのままトルコに送還されたという。 Aさんによれば、弟は結婚していて、妻とまだ幼い3人の子どもがいる。妻と子どもたちには在留資格があるが弟にはないため、難民申請を3回以上、行っていた。 一度強制送還されると、出入国管理及び難民認定法(入管難民法)に基づき、通常5年間の再入国禁止が適用される。 残された家族はいま、途方に暮れている。妻は日系人でトルコのことは何もわからない。子どもたちは全員日本で生まれ育ったので、トルコに行っても言葉もあまり通じない。妻は遠く離れた夫を心配し、子どもたちは、こう言う。 「パパに会いたい」 ■急速に進む外国人政策の厳格化 今年に入って、外国人政策の厳格化が急速に進んでいる。 これまで難民申請中の送還は一律に停止されていたが、昨年6月に施行された改正入管難民法で、難民申請が3回目以降の人は「難民認定すべき相当の理由」を示せなければ送還できるようになった。そして今年5月、出入国在留管理庁(入管庁)は「不法滞在者ゼロプラン」を打ち出した。「外国人と安心して暮らせる共生社会の実現」を目的に、難民申請3回目以降の人らを中心に、係官が同行して行う「護送官つき国費送還」を進めると明記した。 入管庁によれば、6~8月にこの方法で強制送還されたのは119人と、前年同期(58人)の約2倍だ。国籍別ではトルコが34人と最も多く、スリランカ17人、フィリピン14人、中国10人などと続いた。難民支援の関係者らによると、「トルコ国籍」の大半はクルド人とみられる。 強制送還は何を基準に行っているのか。