16年前、埼玉県熊谷市で小学4年の男の子がひき逃げされ死亡した事件。 時効まで残り4年を切るなか、母親は9日、法務省に「死亡ひき逃げ事件」の時効撤廃を求める嘆願書を提出しました。 ■犯人の処罰できなくなる「公訴時効」 山形純菜キャスター: 「公訴時効」とは、犯罪から一定期間が経過して、犯人の処罰ができなくなるというものです。 2010年4月27日改正法が施行され、「殺人罪」「強盗殺人罪」など人を死亡させた犯罪で死刑にあたるものについては、公訴時効が廃止されました。以前は25年の公訴時効があったということで、厳格化されています。 TBS報道局 社会部 寺島尚彦 記者: 名古屋のアパートで女性が殺害された26年前の事件で、10月に犯人が逮捕されました。法改正が行われていなければ、時効が成立していた事件にあたります。 逮捕された女は「毎日不安だった」と供述しているということで、まさに“逃げ得”は許されないという遺族の思いが解決に導いた事件だと思います。 ■なぜ必要?「正義」と「平穏」のバランス 山形純菜キャスター: 公訴時効は、▼「犯罪者を処罰する重要性」という正義の実現、そして、▼「過去の事件と区切りをつけ社会全体の平穏を保つ」法的安定性、この二つのバランスを保つためにあるということです。 TBS報道局 社会部 寺島尚彦 記者: 「これだけの事件だから、絶対に犯人を捕まえてほしい」という国民の思いにこたえる「正義の実現」の一方で、バランスも必要です。 罪には重いものから軽いものまであり、軽い罪でも犯人が国家権力のもとで、監視をされることが良いのかどうかという点。そして、被害者の中にも「今の生活を維持したい」「そっとしておいてほしい」という人もいれば、当然、処罰感情の強い遺族もいます。 犯罪者・被害者も含む社会全体に、平穏と区切りをつけることが必要だと、そのバランスを取り決めているのが「公訴時効」の考え方とされています。