一貫した無罪の訴えが受け入れられた――。宮崎県串間市の設計業務の指名競争入札をめぐり官製談合防止法違反などの罪に問われた裁判で10日、宮崎地裁から無罪の判決を得た元副市長の福添忠義被告(82)や弁護団は喜びの声をあげた。長期に及んだ勾留に批判の声も聞かれた。(吉田啓、奥正光) 「主張を理解していただいて、うれしく思っています」。福添元副市長は報道陣に気持ちを問われ、そう答えた。事件では、新たな消防庁舎の設計業務についての入札で業者側に便宜をはかったのではないかが疑われた。 判決では、業者側に対し便宜を図る意図はなかったとの判断が示された。「立派な建物を造っていくと串間市は考え、その立場で仕事をしたということを認めてもらった」 主任弁護人を務めた前田裕司弁護士は「すべての取り調べ録画記録をつぶさに検証した」と振り返った。元副市長と共謀したとして逮捕された業者側の二百数十時間にも及ぶ録画記録をすべて見た。年末年始や大型連休もその検証に費やし、供述調書との矛盾点をあぶり出したという。 「絶対にない」。前田弁護士は事件の記録を見て検察側が有罪主張の中核とした「2回目のリスト」が存在しないことを確信した。元副市長も「そこはもうまったくない。自信を持ってそれが言えた」。 検察側は、久米設計側が希望する指名業者のリストを2回作成し、「2回目のリスト」をもとに元副市長が市職員に指名業者の選出案を作らせ、さらにその情報を電話で業者側に伝えたと主張した。 だが、事件の記録には「2回目のリスト」の存在を裏付ける客観的な証拠は見あたらず、業者側の取り調べ録画の検証からは、供述調書との矛盾点が浮かんできた。