「二度と関わらないで」 民間も日本版DBSを 男子選手の願い

二度と選手に関わってほしくない――。バトントワリングチームの男子選手に性的暴行を加えた事件で、準強制性交等などの罪に問われた元コーチ、小城桂馬被告(41)に、京都地裁は15日、実刑判決を言い渡した。他の選手が自分と同じような目に遭わないためにも、被害を防ぐ仕組みづくりを進めるべきだ、と男子選手は願う。 男子選手は3歳でバトンを始めた。通い始めたスクールで被告と出会い、中学生のころに被告がコーチを務めるチームに加わった。悪夢が起きたのは、高校3年生だった2023年2月だった。 被告の自宅マンションで体を腕で押さえられ、わいせつな行為をされた。翌月の3月は性的暴行も受けた。家族に打ち明け、警察に相談した。 被告は24年4月に逮捕されたが、男子選手は事件後、吐き気や震えが止まらなくなった。「(被告と)付き合っていた」という根も葉もないうわさにも苦しんだ。心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、大好きだったバトンを視界に入れることすらできなくなった。 日本バトン協会は23年12月、事件関係者の処分を公表した。ただし「(被告が協会を)退会したため処分できない」と判断。24年には協会への再入会をできないようにもしたが、男子選手の父親は「会員でなくとも、個々のバトンクラブが個人的に指導を依頼することはできる」と実効性に疑問を呈する。 ◇ 国は子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴の確認を事業者に義務付ける「日本版DBS」のガイドライン策定を進める。日本版DBSは24年6月に成立したこども性暴力防止法に基づく制度で、事業者は従業員らの性犯罪歴を、国に照会して確認する。 制度の対象になるのは、学校や認可保育所などの公的施設。民間は任意で国の認定が必要だが、学習塾や放課後児童クラブ、芸能事務所など、子どもが関わる分野で幅広く対応を求める。 男子選手の家族は民間のスポーツクラブでも義務付けることを求める。男子選手は「子どもの安全を守るためにも、日本版DBSをバトン協会にもぜひ導入してほしい」と訴える。【水谷怜央那】

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