「スタンド・バイ・ミー」「恋人たちの予感」「ミザリー」などの名作で知られる映画監督のロブ・ライナーさんが12月14日(現地時間)、ロサンゼルスのブレントウッドにある自宅で妻のミシェル・シンガーさん(70歳)とともに死去しているのが発見された。78歳だった。2人はナイフによる刺傷で死亡しており、ロサンゼルス市警は殺人事件として捜査を進めている。 米TMZによると、ロサンゼルス消防局が現地時間14日午後3時40分頃に通報を受けて自宅に駆けつけたところ、夫妻が死亡しているのを発見した。強制侵入の形跡はなかったという。ロサンゼルス市警は15日、ライナーさん夫妻の息子ニック・ライナー(32)を殺人容疑で逮捕したと発表。ニックは薬物依存とホームレス状態に苦しみ、12回以上のリハビリ施設入所歴があった。2015年にライナーさんが監督した「ビーイング・チャーリー」は、ニックが共同脚本を務め、薬物依存に苦しむ若者の姿を描いた作品だった。 遺族の代理人は「ミシェルとロブ・ライナーさんの悲劇的な死去を深い悲しみとともにお知らせします。この突然の喪失に心を痛めており、この信じられないほど困難な時期にプライバシーの尊重をお願いします」と声明を発表した。 ライナーさんは1984年の「スパイナル・タップ」で監督デビューを果たすと、その後12年間で映画史に残る傑作を次々と世に送り出した。85年の「シュア・シング」に続き、86年にスティーブン・キング原作の「スタンド・バイ・ミー」で青春映画の金字塔を打ち立てた。同作はアカデミー作品賞にノミネートされ、リバー・フェニックス、ウィル・ウィートン、コリー・フェルドマン、ジェリー・オコンネルら若手俳優たちの出世作となった。 87年には「プリンセス・ブライド・ストーリー」でファンタジー・コメディの傑作を生み出し、89年の「恋人たちの予感」ではビリー・クリスタルとメグ・ライアンを主演に迎え、ロマンティック・コメディの最高峰と称される作品を完成させた。 90年には再びキング原作の「ミザリー」でスリラーという新境地を開拓。主演のキャシー・ベイツはこの作品でアカデミー賞主演女優賞を受賞した。92年の「ア・フュー・グッドメン」ではトム・クルーズ、ジャック・ニコルソン、デミ・ムーアを起用した法廷ドラマで再びアカデミー作品賞ノミネートを果たした。 95年の「アメリカン・プレジデント」ではマイケル・ダグラスとアネット・ベニングを主演に迎え、大統領の恋愛を描いた政治ドラマを手がけ、96年の「ゴースト・オブ・ミシシッピー」では公民権運動を題材にした社会派作品を発表した。 こうした黄金期を経た後も、ライナーさんは創作活動を続け、2007年の「最高の人生の見つけ方」ではジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンを主演に迎え、余命わずかな2人の男性の友情を描いた心温まる作品で観客を魅了した。 訃報を受け、ハリウッドからは追悼の声が相次いだ。バラク・オバマ元大統領は追悼の言葉を寄せた。「ロブ・ライナーさんの映画とテレビでの功績は、私たちに最も大切な物語を与えてくれました。しかし彼が生み出したすべての物語の根底には、人間の善良さへの深い信念がありました」 ライナーさんの2作目の監督作「シュア・シング」で主演を務めたジョン・キューザックは、師であり恩人でもあったライナーさんへの思いを語った。「ロブを偉大な人間にしたのは、俳優、監督、脚本家、プロデューサーとしての並外れた才能ではなく、彼の巨大な心、限りない寛大さ、そして品位と人間性でした」。さらに「彼には魂があり、他者の魂を見る目がありました。彼は正義を愛していました。業界での私のキャリアを始めさせてくれ、息子のように面倒を見てくれました。あらゆる意味で立派な人でした」と続けた。 「ミザリー」で主演を務めたキャシー・ベイツは声明を発表した。「完全に打ちのめされています。このひどいニュースを聞いて、恐怖を覚えました」と述べ、「彼はまた、自らの政治的信念のために勇敢に戦いました。彼は私の人生の進路を変えてくれました」と締めくくった。 ライナーさんが残した作品群は、様々なジャンルで観客の心を掴み続けてきた。卓越した映画作家としての才能とともに、その人間性も多くの人々の記憶に残り続けるだろう。