12月8日の朝、大塚署から姿を現したのは、若い男だった。表情を読み取ることはできなかったが、視線は定まらずにあちこちをさまよっていた。 警視庁が11月26日に麻薬取締法違反(営利目的輸入)容疑で再逮捕したのは、与那嶺翔容疑者(23)だ。今年5月に大麻由来の違法成分「テトラヒドロカンナビノール(THC)」を含む“大麻リキッド”を密輸したとされる。 「与那嶺容疑者は大麻リキッド約1.1kgを隠した荷物を、アメリカから横浜市内の関係先宛てに発送。成田空港から輸入しようとしました。液体を入れた袋はラップでくるんだうえ、粘土で作られた皿の内部に詰められていました。アメリカの業者と秘匿性の高いアプリで連絡をとり、注文したとみられています。 与那嶺容疑者は6月にもやはりTHCを含んだ液体を輸入した容疑で、11月5日に逮捕されています。取り調べに対しては『言いたくない』と供述しているようです」(全国紙社会部記者) 近年、大麻リキッドの押収量が増えている。’24年の警察庁統計では、乾燥大麻の押収量が前年から大幅に減る一方で、大麻リキッドや大麻樹脂などの「大麻濃縮物」の押収量が前年の約36kgから約68kgへと2倍近く増加。大麻樹脂に係る検挙数は横ばい状態のため、増加しているのはリキッドとみられる。なぜ、このような現象が起きているのだろうか。元麻薬取締官の高濱良次氏が解説する。 ◆「時代とともに吸引方法も変わる」 「以前は大麻といえば、乾燥大麻や『チョコ』と呼ばれる大麻樹脂でした。大麻リキッドは大麻草の花穂や葉の成分を濃縮した液体で、比較的最近に出てきたもの。液体状のまま専用の電子タバコで吸うのですが、これが若い人たちにウケているようです。 利点としてはタバコ感覚で手軽に吸えることと、吸っていても大麻独特の匂いがしないので、周囲にバレにくいという点です。我々も昔はクラブやディスコへ行って匂いを嗅げば、大麻を吸っている人間がいるかどうかすぐにわかったけれども、これはわかりにくいようです。また、所持していても一見、通常の電子タバコ用リキッドと見分けがつきません」 また、薬物事犯の中でも大麻リキッドを電子タバコで吸引するというスタイルを若い層が好むのは“ファッション”の側面もあるのではないかという。高濱氏が続ける。 「昭和の時代、覚醒剤といえば注射器で打つのが普通でしたが、平成の若者はそれを“ダサい”と言ってガラス容器やアルミホイルに入れた覚醒剤を火であぶって吸うやり方が主流になりました。大麻も紙タバコに巻いてぷんぷん匂いをさせながら回し飲みするよりも、電子タバコで吸うほうが彼らの文化にフィットするんじゃないでしょうか。 近年では大麻で捕まるのはほとんどが若い層で、’24年の大麻事犯の検挙人員は30歳未満が7割以上を占めました。時代とともに大麻の吸引方法も変わっていっているのでしょう。そして、若者の間に薬物がどんどん広まっている背景としては、SNSの発達で、普通の人間が売人になって普通の人間に薬物を売るのが当たり前になっていること。さらに薬物に対して罪の意識が希薄だということが挙げられます」 薬物は身近にある。どれだけ手軽にアクセスできるようになったとしても、ひとたび手を染めれば取り返しのつかないことになる可能性を肝に銘じておくべきだろう。 ※「FRIDAYデジタル」では、皆様からの情報提供・タレコミをお待ちしています。下記の情報提供フォームまたは公式Xまで情報をお寄せ下さい。 情報提供フォーム:https://friday.kodansha.co.jp/tips 公式X:https://x.com/FRIDAY_twit