「私の長女は事件で亡くなりました。はっきり言うと、殺されました」20年前に殺人事件で長女(28)を失った父親が訴える「命」の意味【前編】

2025年12月、宮城県色麻町にある加美農業高校の視聴覚室に、穏やかながらも力強い声が響きました。 八島定敏さん: 「私の長女は事件で亡くなりました。はっきり言うと、殺されました」 高校生にこう語りかけたのは、柴田町に住む八島定敏さん(74)。20年前に、長女を殺人事件で亡くした父親です。 2005年10月、八島さんの長女・和佳子さん(当時28)はコンビニエンスストアで勤務中に、元同僚の男性に刺され命を奪われました。「命って何だろう」和佳子さんの死を経験して初めて、八島さんはこの問いと向き合うことになりました。 ■「和佳子」という名前に込めた願い 八島さんは、若い世代に自らの体験や思いを語り続けています。講演会の冒頭、和佳子さんの生い立ちを、八島さんは懐かしそうに振り返りました。 和佳子さんが生まれたのは1977年1月1日、雪の降る朝でした。「生まれる前から、どんな名前を付けようか一生懸命考えました」と八島さんは振り返ります。 生まれてきたのは「ものすごく可愛い女の子」。八島さんは、娘に美しく育ってほしいと願いました。見た目だけでなく、心も美しい人になってほしい、そんな思いから、最初は「美」という字を名前に入れようと考えました。 しかし、調べていくうちに、中国では「美」よりもさらに美しい人を「麗人(れいじん)」と呼び、さらに最上位の美しい女性を「佳人(かじん)」と呼ぶことを知りました。 「和やかな、平和な人生を送ってほしい。そして、より美しくあってほしい」 そんな願いを込めて、八島さんは生まれてきた女の子に「和佳子」と名付けたのです。 ■父親思いの長女が歩んだ道 八島定敏さん:「和佳子は親思いで妹も大事にする本当に私の子どもとは思えないぐらいいい子でした」 家族に愛されて育った和佳子さんは、福島の女子高を卒業し仙台にある外国語の専門学校へ進学。高校時代に八島さんの家ではドイツやオーストラリアからの女子高生のホームステイを受け入れており、それがきっかけで英語に興味があったんじゃないかと八島さんは懐古します。

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