「10万円で奪われた夫の命」法廷で泣いた“中学生の娘”への冷たい言葉…絶望の底にいた妻が国を動かすまで

■法廷で泣いた“中学生の娘”への冷たい言葉…絶望の底にいた妻が国を動かすまで 2004年のクリスマスの日、1か月間行方不明だった夫は遺体となって帰宅した。 総合商社で一生懸命に仕事し、中学生の娘と小学生の息子から愛される「世界一のお父さん」だった。 しかし、上司が製品の商権を不正に持ち逃げして会社を辞めるトラブルが起きた。会社のために裁判の担当者となっていた夫は、元上司に逆恨みされ、「闇バイト」のような形で集めた若者たちによって拉致・監禁され殺害された。 当時、東京都中野区の区議会議員だった近藤さえ子さんは、突然「犯罪被害者家族」となった。 たった一人で行う「夫をこの世から消す作業」、小学生の息子が用意してくれた箸の突き刺さった「冷たいご飯」を流し込む孤独。そして、謝罪に来た加害者家族からの「私には関係ない」という心ない言葉――。 地獄のような日々を耐え、ようやく迎えた刑事裁判。犯人は厳しく裁かれると思っていた。 しかし、そこで彼女を待ち受けていたのは、「10万円」で残酷に奪われた夫の最期、被害者より「加害者」が優先される現実、そして、中学生の娘に投げられた冷たい言葉だった。 (この記事は前・後編の後編です) 【前編を読む→】「夫の遺体はクリスマスに帰ってきた」社会から忘れられていた「被害者家族」戦い続けた妻の20年 ■法廷で知る理不尽な現実 夫の命は「たった10万円」 やがて刑事裁判が始まった。そこで近藤さんは、夫がどのように殺されたかを初めて知ることになる。 主犯の元上司は、5人の若者に「10万円」で拉致を依頼していた。元上司の甥が友人や遊び仲間を誘うという、安易なつながりだった。 夫は帰宅途中、自宅前からその5人の若者に拉致され、車に押し込まれた。ガムテープで体中をぐるぐる巻きにされ、息もできない状態にされたまま元上司の実家に放置され、絶命したという残酷な事件だった。 遺体は、主犯の元上司が一人で茨城県の山中に埋めていた。

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