女性をカネで買う男に厳罰を!「廃絶」vs.「合法化」 海外の例から学ぶ「性売買禁止」は是か非か

「買春の処罰化」を求める声が高まっている。’25年11月に東京・湯島の個室マッサージ店で、タイ国籍の12歳の少女が性的サービスを強要されていたことが発覚した。この事件では少女が1ヵ月ほどの期間に約60人の客にサービスをしていたことが判明、マッサージ店の経営者だけでなく客に対しても非難が集中した。事件をきっかけに日本でも「売る側」だけでなく「買う側」も罰するべきと、政治家や女性支援団体などが訴えている。 高市早苗首相は同年11月の衆議院予算委員会で、現行の売春防止法で買う側を処罰する規定がないことを受けて、平口洋法相に買春規制を検討するよう指示した。法務省は3月にも有識者を含めた検討会を設置し、売春防止法の見直しに向けた議論を始めるという。 さて本当に「買春は処罰されるべきもの」なのか。この点について、諸外国の性風俗を巡る取り締まりについて例を挙げながら、考察していきたい。なお、本稿では説明を簡潔かつ分かりやすくするため、「性を買う当事者=男性」「性を売る当事者=女性」とする。 「北欧モデル」の明暗 現在、世界では性売買(売春、性風俗)について、大きく分けて2つの考え方がぶつかり合っている。 1つは「廃絶論」(アボリショニズム)だ。「これは性暴力(性的搾取)だ。需要を根絶し、制度そのものをなくそう」という考え方で、性風俗否定派(廃止派)である。 もう1つは「セックスワーク論」だ。「これは仕事(職業)だ。働く者の権利を守り、刑罰の対象から外し、環境を良くしよう」という考え方であり、性風俗肯定派(労働派)である。 廃絶派は、「買う側を罰し、売る側は罰しない」”北欧モデル”を支持している。スウェーデンは1999年に世界に先駆けて買春を犯罪化した。以降、’09年にノルウェー、’14年にカナダ、’16年にフランス、’17年にアイルランド共和国、’19年にイスラエルなど、北欧モデルの採用国は増加した。 スウェーデンでは10年間で街頭での売春が半減し、全体の売買春は周辺国と比べて抑制されているという。同法は街娼の減少、国民への道徳的好影響(「買春は悪である」という社会規範の浸透)などが成果として報告されている。 だが、この法律を「失敗だった」と批判する声も大きい。スウェーデンやカナダなどでは法律施行後、以下のような問題点が指摘されている。 ・「男性が摘発を恐れるため、女性は人目に付かないように活動せざるを得なくなり、客が選んだ場所に行くことが増えて危険な環境に追いやられた」 ・「家主やホテル経営者が売春斡旋として告発される可能性があることから、女性が住居を追い出されるなどして、安全に働ける空間が減った」 ・「北欧諸国で性産業に従事する人々の大多数を占める外国人女性(永住許可を持たない移民)は国外追放の恐れがあるため警察に対し恐怖を抱くうえ、社会保障や公的医療などの国家サービスから事実上排除されているために売春をやめることができない」 ・「女性を”被害者”として固定することから社会的スティグマ(負の烙印、汚名)が強化され、差別や排除が拡大した」 フランスでは買春処罰法が施行されると路上に立つ女性は減ったが、人目に付きにくい暗い森の中で客を待つ女性が増えた。顧客が減ったことで困窮した生活を余儀なくされている女性が少なくないという。 北欧モデルはむしろ「地下化させ危険を増大させた」ともいわれている。 買う側だけでなく、売る側も罰しているのが韓国である。’04年に売買春行為を処罰する「性売買特別法」が施行されると、売春街が一斉に摘発された。その結果、性売買はチャットアプリを使用するなど地下にもぐった。さらに、女性は日本やアメリカなどに出稼ぎに行き、男性も海外へ遊びに行くようになった。見えにくくなっただけで、性売買は一向に減らなかったという。

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