うなだれるでもなく、周囲をキョロキョロしながら階段を降りてくる男。報道陣のカメラに気づいても表情を変えることなく、じっとこちらを見つめていた──。 2月27日までに、路上で女性の後をつけ、わいせつな行為を繰り返したとみられる会社員の男が逮捕された。 「逮捕されたのは会社員の栃内駿斗容疑者(27)です。捜査関係者によると、今年1月、栃内容疑者は、犯行現場となった東京・練馬区の駅近くの路上で帰宅途中だった20代の女性を見かけると、500メートルほど尾行しました。そして後ろから気づかれないように近づき、尻を触るなどのわいせつ行為をした疑いがもたれています。当日、栃内容疑者は酒に酔っていたとみられていて、警視庁の調べに対し、『会社のストレスで理性が抑えられなかった』などと話し、容疑を認めています」(全国紙社会部記者) いわゆる「痴漢」と呼ばれる犯罪の検挙率は、一向に減ることはない。そのため、’23年に刑法が改定され「不同意わいせつ罪」が新設されたことで、刑罰がこれまでよりも重くなる傾向がある。最近では、初犯といえども、逮捕・実刑となるケースも出てきている。 ’24年5月には、私鉄の電車内で通学中の女子高生(当時15歳)の尻を触るなどして、不同意性交等罪に問われた無職の男に対し、東京地裁は懲役4年の実刑判決を下している。男は逮捕された際、ストレスを解消するために、痴漢行為を50回程度繰り返していたことを供述していた。裁判でも、痴漢行為を認め、 「犯行当時、ストレスと欲望を制御できなかったために、被害者の気持ちを考えることができなかった」 として被害者に謝罪したが、裁判長は、 「ストレスを解消するための行為としての自己中心的な自己決定は、強く非難されるべき」 と述べ、初犯にもかかわらず、懲役4年の実刑判決を言い渡している。男は、二度と痴漢行為をしないために「電車には乗らない。乗っても女性の近くに行かない」などと話し、ストレス解消のために社会復帰後は趣味のスポーツをやることなどを約束したというが、この手の犯罪の再犯率は極めて高いと言わざるを得ない。 新潟青陵大学大学院教授(社会心理学)の碓井真史氏に話を聞いた。 「いわゆる痴漢行為等で逮捕された容疑者の供述が『ストレスが原因』とか『飲酒で抑制できなかった』と発表されることが多いですが、警察に聴取された時の自己防衛の言い訳として最も言いやすいのです。警察が発表するうえでも、わかりやすいという側面があります。ただ、容疑者の動機をもっと深く掘り下げていくと、一概にそうではなかったりします。普通に考えれば『性欲を抑えられなかったのだろう』と思いがちですが、女性を支配したいという支配欲である場合も少なくありません」 それでも、ほとんどの人は罪を犯すに至らない。たとえ、そういった欲望を心に秘めていても、多くの人は理性でコントロールできている。碓井氏が続ける。 「では、その原因が“性癖”であればどうか? ということになります。つまり、つい最近まで自分自身でもわかっていなかった性癖を知ってしまった場合です。例えば、自分が女子高生の上履きを触ると興奮を覚えるということを知ってしまった人は、その性癖を満たすためには、学校に侵入して上履きを盗まなくてはならない。だから窃盗を繰り返す。こういう性癖は、治療で治るものではありません。だから、学校に近づかないようにする。電車で痴漢を繰り返す男が『電車に乗らないようにする』と裁判で話したことは、間違ってはいません。つまり、その原因となる行為を断つことが大切なのです」 栃内容疑者が罪を犯した周辺では、同様の被害が相次いでいたという。現在、余罪も含めて関連を調べている。