ニセ警察官による詐欺被害が相次いでいる。警察官への信頼を逆手に取り、被害者に「犯罪に関与している」などと不安をあおる一方、「あなたへの疑いを晴らす」と親身さを装い心理を操る手口は巧妙そのもの。詐欺被害を指摘した本物の警察官を「スパイ」と思い込む被害者さえいる。高齢者だけでなく若者も狙われており、警察当局は「犯人側との接触を絶つことが重要だ」と警鐘を鳴らす。 ■「府警の中にスパイ」 「あなたが犯罪に関わっている疑いがある」 昨年、京都府内に住む高齢女性に警察官を名乗る男からこんな電話があった。女性は疑いを晴らすためとして金銭を要求され金融機関で高額を出金しようとしたが、職員が不審に思って府警に通報。駆けつけた警察官が女性に接触した。 警察官は親族にも協力をあおぎ、女性の自宅で説得を試みた。その最中にも女性のスマホには男から着信があり、警察官が通話をスピーカー機能に切り替えて男に警告。それでも女性は腑に落ちない様子で男を信用しきっていた。 警察官はその後も粘り強く女性と面談を重ね、警察署で「偽の警察署はあり得ません。私たちが本物の警察官です」と説得までした。女性が詐欺の手口を理解したのは警察官が説得を始めてから約1カ月後のことだった。 府警によると、他の事件では、詐欺犯がスマートフォンのビデオ通話で被害者に偽の警察手帳や制服を示し「あなたへの疑いを晴らすため、預金の紙幣番号を調べるので口座に振り込んでほしい。調べ終わったら返金する」などと持ちかけたケースも。別の被害者は詐欺犯から「府警の中にもスパイがいる。信用しないでください」などといわれ、疑心暗鬼に陥っていたという。 ■被害は30代が最多 こうした警察官をかたる手口の詐欺被害は全国で後を絶たない。警察庁によると、昨年の認知件数は1万936件で特殊詐欺全体の約4割、被害額は約985億円と全体の約7割を占めた。年代別の被害件数では30代が2221件(20・3%)と最多。高齢者が狙われやすいオレオレ詐欺などとは異なり、幅広い世代が標的となっている。 府内では昨年、警察官をかたる手口の詐欺被害が204件あり、このうち124件は捜査名目だった。「逮捕状が出ている」「捜査については守秘義務がある」などといって被害者が周囲に相談できない状況をつくりだすため、被害が長期化。高額になることもあり、1億円以上の被害が3件あった。