「推し活」で自己破産…若者を襲う「投げ銭沼」という配信依存地獄が深刻化

日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。今回は、ライブ配信での投げ銭による推し活の危険性に注目した。 かつて「投げ銭」といえば、路上ライブのミュージシャンに小銭を投じるようなどこか牧歌的な光景だったのかもしれません。しかし、スマートフォンの普及とともに進化した現代のライブ配信アプリにおけるそれは、もはや純粋な“応援”の域を大きく超え、個人の生活を根底から破壊しかねない“依存の沼”へと変貌を遂げているのが実情です。 ライブ配信における投げ銭とは、視聴者がアプリ内でデジタルアイテムを購入し、リアルタイムで配信者に贈る仕組みを指します。アイテムを贈ることで配信者から名前を呼ばれたり、特別な反応が得られたりする「承認欲求」を刺激。令和3年に公表された民間調査によれば、その潜在的市場規模は3000億円を超えたと見られ、巨大市場に成長しました。その一方で、特に20代から30代の若年層において、月給に見合わない金額を投じ、さらには多重債務に陥るケースが社会問題となっています。 消費者庁の動向調査によれば、ライブ動画の視聴経験は若年層ほど高く、特に20代、30代では「コメント投稿」や「アイテム提供」といった能動的な参加率が他の世代を大きく上回っているのが特徴。デジタルネイティブとしてオンライン上の交流に心理的障壁が低く、画面越しの相手を身近に感じることで、即効性のある承認を求め“沼ってしまう”わけです。 こうした状況を裏付けるように、近年は投げ銭を背景とした凄惨な事件や多額の不正流用が相次いで報じられています。昨年3月には、東京・高田馬場の路上でライブ配信中だった22歳の女性ライバーが、リスナーである40代の男に刺殺されるという痛ましい事件が発生しました。男は多額の金を貸していたとされ、犯行後には「借金を返さないのに配信で稼いでいくことに、やり切れない気持ちになった」と供述。ライバーとリスナーの距離感の歪みが最悪の結末を招いた例と言えるでしょう。 また、2024年には自動車大手の元社員が、法人契約のクレジットカードを投げ銭などに不正利用し、会社に計約2300万円の損害を与えたとして背任容疑で逮捕されました。最初は数千円程度の応援のつもりだったものが、いつの間にか「自分だけを見てほしい」という支配欲や執着へと変質し、支払い能力を超えた暴走を招いたと見られています。

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