平成22年、神戸市北区の路上で刺殺された私立高校2年の堤将太さん=当時(16)=の遺族が、殺人罪で懲役18年の判決が確定した当時17歳の男(33)と両親に約1億4900万円の損害賠償を求めた訴訟で、神戸地裁(島戸真裁判長)は19日、男に対し計約9650万円の支払いを命じた。両親への請求は棄却した。 島戸裁判長は判決理由で、両親は事件前に地下鉄で面識のない男性の首を絞めたことや、ナイフを隠し持っていたことは把握していたと指摘。ただ、「刃物を用いた凶悪な事件の発生を予見できたとは言い難い」とし、監督義務に違反しないと判断した。 原告側は、両親が事件への関与を疑いながら事件直後に千葉県へ男を転居させ、「発覚を困難にした」と訴えていた。この点について島戸裁判長は、転居は逮捕まで11年かかった要因としたが、法律上保護された遺族らの利益を侵害するものではないと結論付けた。 男は22年10月4日夜、神戸市北区の歩道で堤さんをナイフで刺して殺害。令和3年に逮捕された。 ■「雑な判決」遺族憤り 堤将太さんの遺族が求めていた「被告両親の責任」は認められなかった。19日午後、神戸市内で記者会見した父の敏さんは「本当に雑な判決で、突き放すような言葉ばかりだ」と率直な思いを明かした。 今回の民事訴訟で原告側は、令和5年に神戸地裁から命じられた損害賠償金の支払いのほか、被告両親の監督義務違反の認定▽将太さんのきょうだい3人に対する損害賠償命令▽事件後の転居によって事件の発覚を遅らせたことは不法行為であるとする結論-の3点を求めていた。 しかし、認定されたのはきょうだい3人への賠償命令のみだった。 敏さんは「(被告の)父親は、自分が判断したことは一切間違っていないといった。うちの息子を殺したことは間違いではなかったのか」と憤った。さらに、被告両親に真摯(しんし)な反省がみられないとし、「取り返しのつかないことをやったという認識がまるでない。それを分からせるために、責任があるんだという判決がほしかった」と悔やんだ。 弁護団の河瀬真弁護士は「被告に対して向き合う両親の責任を表面でしかとらえていない。上澄みをすくっただけの判決だ」と非難した。