【2005年のINTERNET Watch】ネット発「恋のマイアヒ」ヒットも「のまネコ」が問題化。Web 2.0、私的録音保証金の議論も話題に

■ 2005年の出来事 2005年(平成17年)は、9月に行われた衆院選で自民党が大勝。この選挙は郵政民営化の是非を問い、郵政解散・郵政選挙とも言われたもので、小泉純一郎首相が掲げ続けていた郵政民営化が実現する運びとなる。 2月にはライブドアによるニッポン放送買収騒動が勃発。ライブドア社長の堀江貴文氏は、ニッポン放送の騒動に関連して、しばしば「想定内」と発言。騒動終結後は9月の衆院選に立候補するなど、非常にメディアを賑わせた。 この年の新語・流行語大賞は「小泉劇場」と「想定内」の2つとなっている。このほか、2003年から話題になっていた「ブログ」がこの年のトップテン入り。翌2006年には「mixi」がトップテン入りし、インターネットそのものから、サービスに世間の関心が移っていくことを伺わせる。 このほか、3月から愛知万博(愛・地球博)が開催。4月にはJR福知山線脱線事故が発生している。海外ではロンドン、バリ島などでテロが相次いだほか、鳥インフルエンザの流行に注目が集まった。 2026年2月に30周年を迎えたINTERNET Watchは、1996年2月に有料メールマガジンとして創刊し、1997年1月にウェブサイトを開設した。ここでは2026年の視点から2005年の記事を10本取り上げ、当時を振り返る。 □1. ネットの話題から発売された「恋のマイアヒ」ヒットも、「のまネコ」問題発生 ▶「恋のマイアヒ」の“のまネコ”はモナーにインスパイア~エイベックス この年、「恋のマイアヒ」という曲が発売され、ヒットした。もともとはモルドバ出身の男性音楽グループ「O-Zone」による「Dragostea Din Tei」という曲だが、歌詞が日本人には「飲ま飲まイェイ」など奇妙な日本語に聞こえることから、「空耳」の歌詞を付けた動画(当初はFlash動画)が流行り、エイベックスから「恋のマイアヒ」というタイトルで発売された。今でいう「ネットミーム」的な、初期の流行の1つと言える。 この際、エイベックスでは、2ちゃんねるで流行していたアスキーアートのキャラクター「モナー」に似たキャラクターを作成して「のまネコ」と命名し、グッズの販売なども行った。これがネットユーザーの反発を招き、エイベックスと権利管理会社であるゼンが「インターネット掲示板において親しまれてきた『モナー』などのアスキーアートにインスパイアされて映像化され、エイベックスネットワークとゼンが今回の商品化にあたって新たなオリジナリティを加えてキャラクター化したものだ」との見解を発表したのが、上記のニュース。 技術動向や製品レビューは「BroadBand Watch」が注力し、INTERNET Watchでは業界動向的なニュースを主に扱っていたこともあり、このニュースが2005年に最も読まれたニュースとなった。 当時、2ちゃんねるのほか、ブログやSNSといったソーシャルメディア(当時はCGM:Consumer Generated Mediaなどとも呼ばれた)が流行した中で、ユーザー発のコンテンツがヒットする現象が話題になりやすかったことと、企業がユーザーの流行に分かりやすく「ただ乗り」したように見えることが批判を集め、いわゆる「炎上」につながったことから、注目度が高まったと考えられる。 □2. 「Web 2.0」に注目、各社が適応を模索 ▶“Web 2.0”の導入、従来メディアは「恐る恐る」 ▶Web 2.0とYahoo!検索APIの関係~井上俊一・検索企画室長が語る 「APIでYahoo! JAPANをどんどんハッキングして」 海外で2004年頃から「Web 2.0」というキーワードが注目されだして、この年には国内でも話題に上がることが多くなった。 Web 2.0とは何か? というと、当時でも論点を整理するのが難しく、後年に「Web 3.0」が提唱されるようになってからはさらに話が複雑になっているが、2005年当時におけるウェブの大きな変化は、それ以前はプロ(企業)によるウェルメイドなコンテンツの影響力が大きかったのに対し、ブログやSNSなどにより、個人ユーザーが発信力・影響力を持つようになったことだと言える。 上記の2つの記事でも、個人ユーザーとどのように連携するか、個人ユーザーの力をどのように取り入れるか、といったことが語られている。 □3. デジタルプレイヤーを「私的録音録画補償金」対象に? ▶どうなる「私的録音補償金制度」~iPodは補償金の対象になるのか 私的録音録画補償金制度(上記記事では音声のみの話題であることから「私的録音補償金制度」としている)とは、デジタル技術による録音・録画用媒体に補償金を設定し、権利者に還元する制度。対象に指定された媒体は、補償金分が価格に上乗せされることになる。 当時、CD-RやDAT、MDなどが私的録音補償金制度の対象となっていたが、これにiPodのようなデジタルオーディオプレイヤーを対象として加えるか? という「iPod課金」議論がこの年起こった。問題はHDDやメモリカードのような、録音のみに使われるわけではない汎用の機器に補償金を上乗せしてよいのか(ユーザーにしてみれば、録音に使わないのに補償金を取られる、ということにもなり得る)という点。権利者側であるJASRACは、iPodは主たる利用目的が録音である、と主張。メーカー団体のJEITAは、汎用機器を指定すべきでなく、制度を見直すべきとの主張。この後、2006年1月に文化庁はiPod課金見送りの報告書を決定している。 □4. ライブドア、ニッポン放送買収ならずもフジテレビと協業へ ▶「想定内の中でも良い方で決着できた」ライブドア堀江社長 2月8日、ライブドアがニッポン放送株35%を取得。「ニッポン放送に命を懸ける」とし、ラジオ放送に、インターネット業界で培ったライブドアのノウハウを組み合わせてサービスを強化すると意欲を語った。 当時ニッポン放送は、自社よりも規模が大きなフジテレビの親会社という関係にあり、この関係の解消のため、フジテレビがニッポン放送株の公開買い付けを発表していた。 この後、4月18日にフジテレビがライブドアが持つニッポン放送株を(株を保有するライブドア子会社を買収することにより)買収し、ニッポン放送を子会社化。さらに、フジテレビがライブドアに資本参加し、協業する運びとなった。これを受けての堀江氏のコメントが「想定内の中でも良い方で決着できた」。この結果には、買収劇にフジテレビ側のホワイトナイト(友好的買収者)として参戦したSBI証券の北尾吉孝氏も、歓迎のコメントを寄せている。 この年には、堀江氏もしばしば口にした「放送と通信の連携」がキーワードとなり、10月には楽天がTBS株を取得、11月に提携合意、というニュースもあった。 □5. 個人情報保護法完全施行で「駆け込み紛失発表」? ▶「顧客情報を紛失しました」個人情報保護法の完全施行を前に公表相次ぐ 4月1日に個人情報保護法が完全施行された。個人情報を扱う事業者に取得・利用・管理に関する義務が課され、ウェブサイトにおけるプライバシーポリシーの公開や個人情報保護に対する問い合わせ窓口の設置、漏えい時の個人情報保護委員会への届け出など、さまざまな対応が必要になった。 上記記事は完全施行の前日となる3月31日に公開されたもので、みずほ銀行、みずほ信託銀行、アフラックが直前に顧客情報の紛失を発表したというもの。 □6. 初期の「ランサムウェア」が確認される ▶「ファイルは暗号化した。デコードしたければ金を振り込め」攻撃の新手口 現在猛威を振るうランサムウェア攻撃の典型的な手口「ファイルを勝手に暗号化して、身代金を要求する」が、新手の攻撃として報告された記事。記事によれば、「トロイの木馬型ウイルス『Trojan.Pgpcoder』(シマンテックによる呼称)」は、暗号化したファイルのデコードツールを200ドルで売りつけようとするという。 □7. 病院や原発、警察からも。Winnyでウイルスによる情報流出相次ぐ ▶Winnyでウイルス発生、個人情報流出の可能性も~セキュリティベンダーも混乱 前年に開発者が逮捕されたP2Pファイル共有ソフト「Winny」ネットワーク上に、複数種のウイルスが蔓延しているというニュース。いずれもPCのファイルを流出させるもので、「欄検眼段」「仁義なきキンタマ」という通称だとしている。 Winnyからの情報流出はこの年に始まったことではないが、驚くような流出元のニュースが続発している。主なものを見ていくだけでも大学病院の検査結果、携帯電話基地局データ、小学校の児童の名簿、原子力発電所の内部情報、警察の捜査情報などがある。 □8. 「RSSリーダー」が続々登場 ▶はてな内のサービスと連携したオンラインRSSリーダー「はてなRSS」 ▶米Google、RSSリーダー「Google Reader」のベータ版を公開 「RSS」(Really Simple Syndication)とは、ウェブサイトの更新情報をXML形式で記述したデータ。「RSSリーダー」(あるいは「フィードリーダー」)と呼ばれるアプリ・サービスを用いて、自分が更新をチェックしたいウェブサイトを登録しておくと、RSSリーダーが巡回して更新チェックが行える。ブログの標準機能として搭載されたほか、ニュースサイトなどでも採用が増え、まだプッシュ通知が一般的でなかった時代の、効率的な更新チェック手段として普及した。 しかし、プッシュ通知やSNSによる更新告知などが広く使われるようになっていく中で、RSSリーダーはニッチサービスに留まることとなる。上記のはてなRSSは2010年6月にサービス終了、Google Readerは2013年3月にサービス終了となった。 □9.ニフティのパソコン通信サービスが終了 ▶ニフティのパソコン通信サービスが終了へ インターネット以前に利用されていた「パソコン通信」。その国内最大手だったニフティ(NIFTY-Serve)が、サービスを終了するというニュース。同社は現在ISPとしてサービスを提供し、最近では個人ホームページサービスへの注力をアピールしている。 □10. 「現代用語の基礎知識」が「はてなダイアリーキーワード」から言葉を収録 ▶「ぬるぽ」「中の人」などが「現代用語の基礎知識」に 「現代用語の基礎知識2006」に、「はてなダイアリーキーワード」から105種のキーワードが収録されるというニュース。「はてなダイアリー」は2003年に提供が開始された日記サービスで、キーワードの解説コンテンツ(Wikipediaのようなもの)を作成でき、キーワードを介してほかのユーザーの日記とつながる機能を持っていた(なお、2019年に「はてなダイアリー」はサービスを終了している。提供元の「はてな」は、「はてなブログ」を提供中)。 Web 2.0のムーブメントにより、ネットユーザーの言及するキーワードの世間的な認知が高まりやすくなったことによる現象と言える。上記記事では「現代用語の基礎知識」編集長のコメントとして、従来は「オタク系やWeb系の語句」は掲載しようがなかったが、前年からの「電車男」のヒットなどもあり、一般に浸透した、といった経緯を紹介するとともに、「はてなダイアリーキーワードには、言葉そのものの意味というより、その言葉が利用されているコミュニティで醸成されている雰囲気や関連性が記載されている」との見解を紹介している。

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