東京・渋谷駅前のハチ公広場で4月18日、冤罪被害者の家族らが集まり、再審法改正を求める「渋谷アクション」が行われた。 総合司会を務めたフリーアナウンサーの古舘伊知郎は「袴田さんが言われなき形でああいう風になって58年。とんでもないことが起きている。何で証拠の全面開示とか、不服申し立てとか、検察側のそんな権力側がしっかりと押さえているか。どう思うか」と冤罪被害者、袴田巌さんの姉・ひで子さんとトークセッションを行った。 ひで子さんは「巖だけ助かればいいと思っていない。(検察は)即時抗告はやめていただきたい。法務省も人間として考えていただきたい」と力強く答えた。 この日、冤罪被害者や、冤罪を訴える家族たちが顔をそろえた。大川原化工機事件の冤罪被害者、大川原正明氏は「いつまで拘留されるか分からないというのが続く。仲間が病気を発病した時に、それに対する保釈が下りない」との経験を語る。この事件では勾留中に元顧問・相嶋静夫さんに胃がんが見つかったが、繰り返し保釈を求めたが認められず、死亡した。 また、福井中学生殺害事件の冤罪被害者、前川彰司氏は、「はっきり言って(事件発生から)この40年の時間は、一言でいうと空白」。再審が決定した日野町事件の故・阪原弘さんの長男である弘次さんは「父は死ぬべきではなかった。逮捕されるべきではなかった」。再審請求中である狭山事件の故・石川一雄さんの妻、早智子さんは「法務省が、政府が進めようとしている再審法では、絶対に冤罪者は救われない」と訴えた。 古舘はトークで「この前、自民党の会合があったときに、(議員が)よくぞ言ってくれた。一貫してこの再審法の改正が骨抜きになっていることに怒っている」と話していた。4月6日に自民党本部で行われた会合についてだ。 そこでは再審制度の見直しをめぐって、政府側と自民党が異例の大バトルを繰り広げた。弁護士でもある稲田朋美元防衛大臣は「何も1ミリも私たちの言い分聞かないじゃないですか!」「ほとんどの議員が抗告禁止と言っている。それを全く無視している」と怒りを見せた。 稲田氏ら多くの議員が求めているのは、再審が長期化する大きな原因となっている、検察の抗告・不服申し立ての禁止だ。 自民党広報本部長の鈴木貴子氏も「改ざんがあったり証拠隠しがあったりした。誰が反省すべきか。捜査当局、司法だ。司法の反省と内省が、今回の法務省案に反映されているか? ゼロだ。私はそこに憤りがある。無実の人(袴田巌さん)を58年間死刑囚と呼び続けた。最初から証拠がおかしいと言われていたにもかかわらず、その反省がない案を出してきたことは、私は絶対に承服できない」と語っていた。 なぜ法務省は「検察の不服申し立て」を絶対譲れないのか。元大阪地検検事の亀井正貴弁護士は「この議論はかみ合うはずがない」と指摘した上で、「検察は、犯人を捕まえて治安を維持して被害者を守るべき立場で言っている。非常救済である再審法は最後の砦として人権を守るもの。これは検察の役割ではない。(再審法の見直しを)調整するなら、(検察の)不服申し立てを1発にする。2発目は認めない。高裁まででやる。しかもそれまでの間の審議期間は制約するという考え方。再審法をイチから作り直そうという考え方は法務・検察にはない」と話した。 不服申し立ての維持を求める主な主張は「法的安定性」。最高裁の決定を下級裁判所が覆すことは、三審制度の否定にもつながり、法的安定性が失われるというものだ。 それに対し、レゾバティール法律事務所の阪口采香弁護士は、「刑事訴訟法自体も誤るということを前提に作られていて、それが機能していないから、どう改善していくかという議論なはず。法的安定性が崩れるから、そもそも“安定”が成り立っていないため、そこをちゃんと成り立たせようというところに争点がある。議論がかみ合っていないし、ぼやっとした言葉で逃げて、議論をかわそうとしているイメージだ」と語った。 結果的に、再審制度の見直しを盛り込んだ刑事訴訟法改正案の提出はまとまらず、異例の先送りとなった。 平口洋法務大臣は4月21日の参議院法務委員会で「法務大臣が擁護したり批判したりすることになれば、司法権独立の観点からも問題がありえるとの指摘につながりかねない」と発言。 これに鈴木宗男参院議員は「圧倒的に検察が無理強いしたというか、ただやみくもに抗告しての結果で、多くの人が犠牲になっている。このことを大臣、よく考えてください。いちいち大臣、メモをもらって、メモどおり言うのではなく、国務大臣という立場で今そこにいるのだから、ただ役所のペーパーを読んでいるようでは、私はこの再審法改正の意味がないと思っている」と返した。 現時点での政府による再修正案は、検察の抗告、不服申し立てを原則禁止にした上で、5年ごとに見直すとの規定を付則に盛り込み、将来の全面的な禁止に余地を残す内容だ(朝日新聞から)。 また、政府与党関係者によると「抗告をしてはならない」と明記。そのうえで、決定を取り消すべき「十分な理由」がある場合はこの限りではない、と記す方向だという。一方で「十分な理由」の判断基準は示されていない。 鈴木貴子氏は4月24日、Xで「これまでの抗告は、すべて『十分な理由がある場合』に限って行われてきたのではないですか?結局は『理由がある』と言えさえすれば、これまでと同じ運用が可能になってしまうのではないか」と投稿した。 4月15日に自民党本部で行われた会合で、井出庸生衆院議員は「自民党はな、法務省のためにあるんじゃないんだぞ。国民のためにあるんだぞ。忘れるな」、稲田氏は「不誠実なの。ヒアリングの後の直しが、直していないじゃない!」と語気を強めた。 日本を代表するニュースキャスターは、なぜ再審制度の見直しを訴え続けているのか。果たして、何がきっかけだったのか。古舘は「人間は半径5m以内の家族の幸せを思い、日々暮らしているため、他人事になってしまうこともある。ものすごい年月の人生を奪われて、苦しみの果てに亡くなった人もいる。そういう冤罪事件が自分の身に降りかかったら、自分の親族に降りかかったら、大切な人に降りかかったらと、立ち止まって考えるべき時がきた。それを訴えることができたのは、この雑踏の中でよかった」と胸中を語った。 冤罪事件に取り組んだ理由は、「12年間『報道ステーション』をやらせてもらっている中で、2014年に袴田さんが一旦出てきて、これから再審で無実へ向かっていく流れがあった時は当然、ダーッと報道するわけです。密着して。だが、また日々起きているニュースの方に行く。そういう忸怩(じくじ)たる思いがあった中で、鴨志田祐美弁護士や、周防正行監督ら、僕なんかと違って長く追い続け、問題追及してきた人たちと知り合って。そしてYouTube等々で会話をしているうちに、自分も少しお手伝いできることがあるかなと思い始めたのがきっかけだ」と明かす。 鈴木宗男氏と貴子氏の親子については、「宗男氏はロシアとの関係性で、“ムネオハウス”など色々あって、捜査当局のいろいろなやり口もさんざん知っている人だ。自分の思いも含めて、他人事ではないというところがあるので重みがあるのかなと。頑張っているのかなと思ってみている」とする。 冤罪被害者や、その家族と接して「ひで子さんとお会いしてもそうだが、福井事件の前川さんや、狭山事件の石川さんの奥様にも会った。当事者の方々は、言葉表すのも失礼なくらい、深い悲しみと苦しみと怒りの中で『何とかしなきゃ』と思っている。そこに直に当たることで、つくづく感じることプラス、そういう方々に徹底的に寄り添う弁護士の方々が、検察のワンサイドの権力がひいたルールを、まともな方向に戻さないといけないと長年寄り添っている人を見ると、ある種の感動があり、自分も手伝えることはないかと思う」と語った。 (『ABEMA的ニュースショー』より)