イランの巨匠ジャファル・パナヒが7カ⽉の監獄生活を語る「シンプル・アクシデント」インタビュー&本編映像

第78回カンヌ国際映画祭にてパルム・ドール(最高賞)を受賞した、イランの巨匠ジャファル・パナヒ監督の最新作「シンプル・アクシデント 偶然」の本編映像(https://youtu.be/-qSXwUuYAEg)とパナヒ監督のインタビューが公開された。 不当に刑務所に投獄された人々が、復讐を果たそうと試みる姿をスリリングに、ユーモアたっぷりに描いた復讐劇。パナヒ監督自身が、二度にわたって投獄された経験と同房で出会った人々のリアルな声から着想を得て、物語へ織り込んだ、スリラーの最高峰だ。 かつて不当な理由で投獄されたワヒド(ワヒド・モバシェリ)は、ある偶然によって、自分に酷い拷問をした看守らしき男に出会う。咄嗟に強引な手段で男を拘束。荒野に穴を掘って男を埋めようとするが、男のIDカードを見ると、復讐相手と名前が違う。男も、人違いだと言う。実は投獄中、目隠しをされていたワヒドは、男の顔を見たことがなかった。男は、本当に復讐の相手なのか?確信が持てなくなったワヒドは、いったん復讐を中断し、同じ男に拷問された友人を訪ねることにするが……。 このほど公開された本編映像は、捕らえた男が本当に<復讐相⼿>なのか――その答えを求め、ワヒドは過去に男から⼈⽣を壊された⼈々のもとを訪ねていく場面を捉えたもの。幸せ絶頂のウエディングフォト撮影中だった花嫁とカメラマン。だが祝福ムードは⼀変。過去を思い出した花嫁は「⼈⽣を無茶苦茶にされたのよ。やつかどうか確かめたい」と怒りを爆発させる。さらに、⾒かねたカメラマンが“匂い”で本⼈確認を試みるも、決定打は得られない。「断定できるのはハミドだけよ」――ハミドなら本当に確証を得られるのか? 緊迫した状況のなかにも、パナヒ監督らしいユーモアが滲み出る印象的なシーンとなっている。 2025年12⽉、アメリカで本作のプロモーション活動を⾏っていたパナヒ監督に対し、イランのイスラム⾰命裁判所は「反体制プロパガンダ活動を⾏った」として⽋席裁判で懲役1年を宣告。さらに2年間の渡航禁⽌、政治・社会団体および派閥への参加禁⽌という厳しい措置が科される事態となっており、加えて 2026年2⽉には、アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃が開始されるなど、情勢は緊迫の度合いを増し、刻⼀刻と変わるイラン情勢の中での公開となる。 本作は「⼆度⽬の収監の経験から直接⽣まれた作品」だと⾔うパナヒ監督は「映画作りを始めた時から、私は社会で起こっていることや⾃分を取りまく環境を描いてきた。だから、7カ⽉の監獄という特異な環境で過ごしたことは、当然私の映画に反映される」と語り「最初に逮捕された2010年の尋問では<なぜこのような映画を作るのか︖>」と聞かれ「私は、⾃分の映画はみな経験に基づくものだ」と返答したと続ける。 そして「形はさまざまだが、その時私が経験していたことが必ず映画に表れる。『⼈⽣タクシー』がまさにそれだ。とりわけ弁護⼠ナスリーン・ソトゥーデとの会話だね。だが、⼆度⽬の収監経験はさらに深い⽖痕を残した」「釈放された時、私は塀の中で出会った⼈たちのために映画を作らずにはいられないと感じた。私は彼らのために撮る責を負っている。個⼈的な経験から話していても、イラン社会で広く起こっていることとつながっている」「特に2022年秋に始まった<⼥性、命、⾃由>⾰命だね。この間に多くの変化があった」と振り返る。 2010年、イラン政府への反体制的姿勢を理由に、映画制作および海外渡航を20年間禁じられ、違反したら禁錮6年という有罪判決を受けていたパナヒ監督が⾃由を取り戻して最初に⼿がけたのが本作だ。だが、本作も、これまでの作品と同じく隠密⼿法で敢⾏したという。「公式な許可を申請していなかった。許可されるはずがないからこそ、これまでと同じ隠密的な⼿法を取らざるを得なかった」と明かす。 さらに「クランクアップ直前には私服警官が現れ、全フッテージの提出を要求されたが拒否した。彼らはクルーの逮捕や製作中⽌をちらつかせ、圧⼒をかけ続けたが、最終的には諦めた。撮影はしばらく中断したものの、再開することができた」と振り返る。過酷な状況のなかでも、揺るがぬ信念を胸に映画づくりへ挑み続けるパナヒ監督の姿勢がうかがえる。 映画は5月8日から、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国公開。

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