まさかの本物のミイラを持参!?呪物コレクター・田中俊行も恐怖する、『THE MUMMY / ザ・マミー 棺の中の少女』の忌々しさ

少女失踪の真相解明に向けて、エジプトの因習や伝説に紐づいた数々の謎と恐怖が交差していくミステリーホラー『THE MUMMY / ザ・マミー 棺の中の少女』(5月15日公開)。サスペンス&ホラーの名手ジェームズ・ワンとブラムハウスが放つ本作は、8年間もミイラの姿で監禁された少女の周りで起こる異変を描く衝撃作だ。 本作の題材となっているのは、世界最古の都市伝説といえるエジプトのミイラの呪い。MOVIE WALKER PRESSでは、呪物のなかでも最もポピュラーともいえる“ミイラ”の謎を迫るべく、怪談師で呪物コレクターでもある田中俊行にひと足先に鑑賞してもらいインタビューを敢行!映画の感想から登場するミイラと呪物の関係性、ミイラにまつわる実話まで語ってもらった。 ■「呪物が身近な僕にとって、こんなことになったらどうしようという怖さ」 エジプト駐在のジャーナリスト、チャーリー(ジャック・レイナー)と妻ラリッサ(ライア・コスタ)の8歳の娘ケイティ(エミリー・ミッチェル)がとつぜん失踪。必死の捜索もむなしく、その手がかりがみつからないまま8年が経過した。そんなある日、飛行機事故の現場で発見された棺の中から、包帯に巻かれた姿で16歳になったケイティ(ナタリー・グレイス)が見つかった。8年間、身動きできず閉じ込められていた彼女は心身共に衰弱。チャーリーたちは自宅で娘の看病をはじめるが、それを機に奇妙な出来事が頻発する。一方エジプトの女性捜査官ダリア(メイ・キャラマウィ)は、犯人にまつわる衝撃の事実を知らされる。 呪物コレクターとしてリアルの呪いに接することもある田中にとって、本作はかつてない恐怖が味わえたという。「僕は独り身なんで、棺に入れられてミイラにされても別にいいじゃないですか。でも映画の呪いは“我が家”というプライベートな空間に入りこんできて、しかも自分の娘や家族が絡んできます。場所的にも気持ち的にも逃げようがないじゃないですか。呪いの現象からケイティの忌まわしい表情まで見せ方がめっちゃうまいし、思わず手をぎゅっと握りしめてしまうほど描写もリアル。そこが観ていてちょっときつかったですね。 なにより呪物が身近な僕にとって、こんなことになったらどうしようという怖さもありました。普通の人にとっては呪いは身近なものではないので、僕より客観的に観れる部分はあると思うのですが、呪物コレクターにとってはリアルに迫ってくる映画で。ここまでやられると、集めるのが怖くなってきましたね(笑)」。 本作のようにミイラがスクリーンに登場したのは1930年代のこと。それ以来ミイラ映画は100年近くにわたって製作されてきた。人々を引き付ける理由のひとつが死者や死後への想いではないかという。「永遠の命とか、死んだら魂はどうなるのかなど、国や地域を超えた共通認識があるからではないでしょうか。魂や意識は存在し続けるかなど永遠に解くことができない問題に対し、1つの考え方を示したのがミイラだと思います。ミイラにすることで魂が残ったり、復活するのは、そうあってほしいという願いなのかもしれません。また、死者が蘇るという考えには、死者への畏敬の念もあると思います。日本では火葬なので違いますが、肉体が残されているのは、それ自体が異様なことですよね。そのことに対する怖さや異様さも、ミイラへの興味に繋がるのではないでしょうか」。 そんな田中が本作でまず興味深かったと話すのは、ケイティがミイラにされ閉じ込められていた頑強な棺とのこと。「単なる棺ではなく、それ自体が呪いを閉じ込めるアイテムだというアイデアがおもしろかったですね。同じようにケイティに巻かれていた包帯も、実はただの包帯ではなく古代の呪文が書かれていて、呪いを封じ込めていました。これは日本や台湾など御札文化のあるところでも、同じように魔除けとして使っていますね」。 また、ケイティが呪われるシーンで登場する虫の存在も、興味深く観ていたそうだ。「儀式で使われたりと、虫は呪術と関わりが深いんですよ。ほかにも例えばサソリも出てきましたが、これも国や地域によって神秘的な扱いをされたり、漢方など薬として使われることもあれば、逆に毒虫と忌み嫌うところもあります。呪いによく似合う存在ですよね」と笑顔で語っていた。 ■「呪いに使われるのは自分の家族ではなく、どこかで“調達”されたもの」 ミイラにされた原因となる失踪事件のカギを握るのは、 “呪場”であるとある農園だ。砂漠の中にぽつんとある農園で、実はある儀式が数百年に渡って密かに行われてきた。これに対し田中は「周りから孤立して、見つからないようにしているんです」と分析する。「傍目には農園を経営しているだけに見えますが、その敷地に秘密を隠している。そういう人たちはリアルに存在すると思います」。 こういった呪場が時には“都市伝説”へと変貌していくこともあるのだとか。「村などコミュニティのなかでは、彼らが呪いをしているとわかっていることが多いと思います。でも誰も口にはしないし近づかない。それがなにかのきっかけで漏れたり噂になって広がる。こうして都市伝説のようなものになることもあるのだと思います」。 失踪したケイティのように、少女が呪いの儀式の標的となったケースは世界各地に存在する。「メキシコには初潮を迎える前に死んだ女の子の手を切り落とし、家の下に埋めると、その家は繁栄するという話があります。泥棒の手を切り落とし、それをミイラにして家の玄関に飾ると魔除けになるとか。使われるのは自分の家族ではなく、どこかで“調達”されたものなんです。インドネシアで聞いた話では、定期的に人を呪い殺さないと生きていけない人もいるそうです。ようは呪いを扱うような人たちには、常識的な考え方は通じなく、大切にしているものが僕らとはまったく違うんです」。 そう説明する田中は、“調達”することに関して1つの事件を教えてくれた。「古くからの伝承で、生まれる前や生まれてすぐに亡くなった赤子をミイラにして祀るという話はありますし、呪物として扱ってもいます。もちろんそれは犯罪ですが、やはり需要があると用意する人間が出てきてしまいます。なかでも有名なのはタイの事件で、あるホテルからひっきりなしに赤ん坊の泣き声がすると住民が騒いだことがあったんです。警察が調べたけれどどよくわからず、聞こえてきたという一室に入ってみるとスーツケースやキャリーケースから何体もの赤子の遺体が出てきたそうです。呪物にするための前の段階だったんですよ。すでに亡くなってるのに泣き声がしたというのは本当かどうかわかりませんが、実際それで住民が騒ぎ犯人は逮捕はされています」。 そして、本作のように密かに忌まわしい慣習が受け継がれていることは、現実でも決して珍しくないと田中は解説する。「例えば、その土地だけで祀られている変わった神様などの話などはよく聞きます。特定の地域だけで聞いたこともない信仰を崇拝することは、もちろん日本にもあります。僕が持っている鵺(ぬえ)の足のミイラもその1つですね。鵺は平安時代あたりから出てきた良くないもの、つまり退治されるもの。西日本にはそんな鵺を祀っている一族がいるんですが、良くないものを祀るという話はほかでは聞いたことがありません。規模は違いますが、この映画のように彼らが祀っているのは呪いに近いものじゃないかと思います」。 ■「清潔さを保つことが、呪いを寄せ付けないことにつながる」 今回、異端の儀式によって呪われたミイラとなるケイティの姿を見て、田中は自身の呪物への考え方も少し変化が生まれたという。「どこまでが人間の一部なのか、生きてはいてもまったく意識のない人はどうなのか。どこまでなら呪物になるかなど、映画を観終えてあらためて呪物というものについて考えさせられました」。 ケイティのような生きながら呪われた人間は“呪物”となるのかを聞くと、「呪物とは人の思いや願いを封じた物ですから、あくまで生きている人の場合は呪物とは言えないと思います」と答えたうえで続ける。「ただし落ちた指など人間の一部は呪物として存在します。たとえば修行を積まれた徳の高い僧侶とか、事件や事故で犠牲になった未練を残したままの人の一部は呪物になりやすいですね。そこに入った恨みや未練などネガティブな念を転用して、いい方向に願いを込める。逆に恨みを晴らすなど呪いの方にも使えます」。 また、ケイティのように“生きたままのミイラ”となることは、日本でもかつてあったと説明する。「生きながら自らミイラになっていく即身仏が近いですね。もちろん呪いではなく、これは信仰の対象で、呪(まじな)いや願いの方が近いですね。全国各地で見ることができますが、本当に綺麗に残ってますよ」。 最後に、もし自分の身に本作のような呪いが降りかかった時に、いったいどうすればいいのか?身を守る手段を尋ねてみた。「呪いから身を守る方法はいくつか存在すると思いますが、国や地域によってまちまちです。予防ということで共通しているのが、清潔さを保つことですね。よく清めるとか浄化するといいますが、薬草や香を炊くのもそのひとつです。この映画でも呪いが発生したところはかなり不潔に描かれていましたが、いる場所を綺麗にするということが呪いを寄せ付けないことにつながると思います」。 取材・文/神武団四郎

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