東京・上野にある富岡矯正歯科が突如閉院状態となり、治療途中の患者らに混乱が広がっている。患者の父親は、娘の矯正治療の前払い金として55万円を支払ったが、4年経っても歯並びは良くならなかったという。 こうした歯科医院トラブルが全国で相次いでいる。日本の歯科医院はおよそ6万7000軒とコンビニエンスストアより数が多いが、その一方で歯科医院の休廃業は過去最多(2025年)となっている。 なぜ歯医者は突然消えるのか。背景には歯科業界が抱える深刻な経営難がある。 東京八王子で街道沿いに巨大な看板を掲げる、きぬた歯科の羅田泰和院長は「東京は完璧な“レッドオーシャン”。ビルに3軒入っているとかある。ラーメン店と一緒」として「例えば僕の時代は30年前ですけど、大体3000万円あればテナント開業できたんですけど、今は新規で開業すると1億円ぐらいかかる。結局お金が返せなくなって倒産する」と現状について語る。 歯科医院は設備費や建築費の高騰と、開業時点で巨額の借金を背負うケースも珍しくないという。かつて歯医者は「むし歯を削れば成り立つ」時代だったが、子どものむし歯は激減。12歳児の平均むし歯本数はこの30年で4本からおよそ0.6本へと減少している。 もはや虫歯を治す商売ではなくなりつつある歯医者だが、さらに患者の奪い合いによる価格競争も起きている。その中で歯科医院が活路を求めたのが自由診療だ。歯科医の主な自由診療にはインプラント、特殊矯正、マウスピース、ホワイトニング、審美などがあり、保険がきかない自由診療は高額になりやすい。 羅田院長は「歯科の場合は自由診療がいろいろ多岐に渡っているのでありがち。(矯正治療で)55万円はめちゃめちゃ安い。大体矯正って安くても70万円はする。それを『55万円なら安いじゃん』と思って一括払いして、そのまま逃げちゃったという。インプラントも矯正も1つの見極め方として、だまされないようにするためには、あまり安いものに飛びつかないということ」と警鐘を鳴らした。 つまり相場より極端に安い。それ自体が危険なサインかもしれないという。さらに注意すべきなのは「前払い」だとして「全額前払いは危険。要は相手に委ねちゃうので。理想は3分の1ずつや、半額ずつがいいんじゃないか」とした。 経営が苦しくなると医院は「今すぐ使える現金」を欲しがり、新しい患者から集めた金でいまの経営を回す自転車操業に。実際去年、千葉県では歯科医師の男が患者から現金200万円をだまし取った疑いで逮捕。自転車操業が背景にあったと見られている。 仮に夜逃げされた場合、払った金は戻ってくるのか。破産申請に詳しい、弁護士法人KTG杉並事務所の木村恒平弁護士は「実際は大多数が泣き寝入り」だとして「基本的に破産手続きを踏んでいく中で、優先的に返済される債権がある。事業をやっていく上で、例えば歯科医院でいえば高額な医療機器のリースだったりとか、場合によっては開業の時に銀行から何千万、何億円という借金をして始めるケースも多い。本当に大きい債権がある。そういった優先的な債権を払っていくと(返金などの)一般債権が後回しにされる。回数券など前払い的性質があるものはトラブルになりやすいというのは実態としてあると思うので、気をつけたほうがいいと常々思っている」と語った。 では、どう見抜けば良いのか。羅田院長は夜逃げ歯医者の特徴について「極端に安いところは避ける。治療する前にお金を納めるところは避ける。あまり治療が長引くのも避ける。去年、うちにいらした患者さんもインプラントを埋めて1年放置されたって言うんですよ。やっぱりおかしい。1年放置するっていうのは。要は次の治療に入った時に歯科医院側も経費がかかる。経費を出せないから埋めた状態で放置してしまう」として「『どのくらいで終わりますか?』と事前に聞くのも患者の権利」と話した。 さらに、極端な格安キャンペーン、全額前払い、高額自由診療の強引な勧誘、治療が進まない、スタッフが少ないなど、こうした兆候には注意が必要だという 「先生1人で女性スタッフ2、3人とか、そういうところは夜逃げしやすい。安易に安いからとか、とりあえず近所だからとかって飛びつくと痛い目に遭う。何か疑問に思ったりヤバいんじゃないかとか。『近所だから』とかではない。歯科医院に限らない。病院でもそうだがセカンドオピニオン、サードオピニオンぐらいまで聞いたほうがいい」(羅田院長) (『ABEMA的ニュースショー』より)