2011年に経営破綻した「安愚楽(あぐら)牧場」(栃木県)の消費者被害が拡大したのは、国が対応を怠ったことが原因だとして出資者約1300人が国に総額約64億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は26日、請求を棄却した。国には規制権限を適切に行使しなかった違法があるとの主張を退けた。 安愚楽牧場の負債総額は約4200億円で、「預託商法」や「オーナー商法」と呼ばれる消費者事件の被害規模として過去最大とされる。国の賠償責任に対する初めての司法判断となる。 1981年設立の安愚楽牧場は、黒毛和牛の繁殖牛のオーナーを募り、生まれた子牛の売却益から年3~8%の配当を得られるとうたった「和牛オーナー制度」を展開。全国から約7万3000人が出資したが、出資金を配当に回す自転車操業の末に破綻した。 元社長ら幹部2人はオーナー数を下回る繁殖牛しかいないのにうそをついて勧誘したとして、特定商品預託法違反(不実の告知)容疑で逮捕され、東京高裁が14年に実刑を言い渡して確定した。原告の出資者は順次国を提訴し、07年以降に出資した額の50%程度を請求額とした。 出資者側は訴訟で、農林水産省は安愚楽牧場に立ち入り検査した09年時点で、オーナー数に比べて繁殖牛が少ない違反を認識できたとし「業務停止命令などを出していれば被害は回避できた」と主張。規制権限の不行使による国家賠償法上の違法を訴えた。 これに対し国側は、立ち入り検査の段階で和牛の頭数不足を疑わせる事情はなかったと反論。追加で調査しても牧場側の隠蔽(いんぺい)工作で不正が発覚したとは限らないとし、国の対応に問題はなかったと主張していた。【安達恒太郎】