「日本版DBS」なぜ医療機関は対象外なのか 医師によるわいせつ事件相次ぐ中、弁護士が「拡大に懸念の声もある」と説明

子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴確認を義務付ける「日本版DBS」が、今年12月に施行される。制度の対象には学校や保育施設などが含まれる一方、子どもの診療にあたる医療機関は対象外となっており、その線引きに賛否がある。この日本版DBSの導入の背景や問題点について元大阪地検検事の亀井正貴弁護士が解説した。 日本版DBSが成立するにあたって、導入に慎重な意見があったのはなぜか。亀井氏は「DBSというのは言ってみれば労使関係、もしくは国民の就業の機会を奪う制度ではある。つまり憲法上保障された職業選択の自由、そこも制約するという問題が出てくる。憲法上の人権の問題」と説明。 「もうひとつはセンシティブな情報である個人の前科情報というのは法務省がクロージングで握っている情報。これが民間も含めて外部に出ていくということ、いわゆるセンシティブなプライバシー情報が流出してしまう問題性」と続けた。 さらに3つ目の問題として「保安処分と刑事罰の違いというのがある」と指摘した亀井氏は「刑事罰というのはやった行為について明確に、客観的に判断する。保安処分というのは将来の再犯の危険性がある場合に、それを規制するという考え方。これは戦前かなり問題とされているもの。あからさまに言うと『将来的に再犯を犯す危険性がある人を排除する』という問題」と、3つの意味において人権問題に関わってくると説明した。 イギリスのDBS制度のように、法的に特定の職業への就職を禁止することは、日本では難しいのか。 「日本でも採用が決まっている人の内定を取り消すこともできるし、それから配置転換して子どもと接しないところに異動させることもできる。一般的には労使関係だといろいろと法的なトラブルになるが、そこは規制することはできている。ただ職業そのもの、就業することそのものを全面的に排除するというのはなかなか難しい」(亀井氏、以下同) 日本ではなぜ医療職がDBSの対象から外れているのか。 「イギリス版DBSでも、子どもと接する機会のある者の職業を規制するというのが元々の発祥。日本で導入する場合でも、法律を作る場合には立法事実というのが必要。これを規制しなければいけないような、社会的な現象、弊害が生じている、ということを前提とする」 「子ども達と日常的に接している教師など、そういった職業の場合はいいが、例えば子どもと接する職業全部を規制していこうとしたら、コンビニで働いているアルバイトの人とか、アルバイトも一般的な職業で、子どもたち、未成年者と接しない職業のほうが少ない。どこまで広げていくのかという問題」 「広げていくのであれば、今この業種について、子ども達に対する、未成年者に対する被害というのが現実化してきている、ということの立法事実が必要。確かに産婦人科医や小児科医は、そういった性的な、未成年者に接するようなところではあるが、そこまで拡大するという議論もあるが、逆に言うとそこまで拡大していいのかという、懸念する声もある」 2026年1月、静岡県警は静岡市内の歯科医師の男(50)を患者への不同意わいせつ罪などの疑いで逮捕、起訴された。この歯科医師が、もう一度元の仕事に戻ることはできるのか。亀井氏は「可能」と回答して「医師の場合は医療審議会というところで、そういう犯罪を犯した場合には業務停止であるとか、医師免許をはく奪というような行政処分というのは行われる。ただ一般的には医師免許のはく奪というのは、なかなかハードルが高い」と説明した。 しかし「今回のようなケースは、単純に不同意わいせつという犯罪を行っただけではなくて、自分の医療に関係する、業務に関連して行った犯罪。その意味ではかなり重い処分は想定される」と見解を述べた。 「今、性加害事件というのは、昔の強姦とか強制性交の時代と違ってものすごく広がっている。つまり同意するか同意しないかということの判断で迷っている段階で、わいせつ行為とか性交行為におよぶというのは犯罪成立だ。それだけでなく、司法は従来の刑事司法やっている人間から考えたら、とんでもないぐらい量刑が上がっている。そのため、ほぼ示談がなければ起訴されてしまう。一発実刑があり得る。この歯科医師の例でも不同意性交にまで至れば5年、6年、7年とかあり得る。わいせつでも1年、2年の実刑はあり得る。だからかなり上がっているというところは前提として認識しておいたほうがいい」 今後、日本版DBSの対象は広がる可能性はあるのか。亀井氏は「立法事実がどうなるか」として「立法事実というのは法律を設けなければいけないほど、社会がその問題について着目して必要を求めている、というところまでいくかどうか。例えば、教師の再犯率はそんなに高いわけではないが、子どもの被害が甚大であるということでやっている。同様の問題意識が国民の中で熟成されていけば、懸念の声はあるが、広がる可能性はある」と推測した。 (『ABEMA的ニュースショー』より)

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