国連人権理事会の調査委員会が23日に発表した報告書は、イスラエルが意図的にパレスチナ人の子どもたちを標的にしてきたとし、その結果、パレスチナ・ガザ地区ではジェノサイド(集団殺害)と人道に対する罪、戦争犯罪が、またイスラエル占領下のヨルダン川西岸地区では戦争犯罪が生じたとした。 新たな報告書は、イスラエル当局と治安部隊が「数十万人規模のパレスチナ人の子どもたちに、死と深刻な身体的・精神的被害を与える行為を意図的に実行してきた」と指摘。また、昨年10月に発効したガザでの停戦後も、殺害が続いたとしている。 同委員会は、これらの行為が「子どもたちを標的にすることで、ガザのパレスチナ人の将来を破壊する戦略の一部を構成している」と結論づける合理的根拠があるとしている。 イスラエル外務省は、この報告書について「全面的に拒否する」と発表。「中傷的な見せかけ」であり、「これまでと同様に度を越したプロパガンダ」だと非難した。 イスラエル軍は、2023年10月7日にパレスチナのイスラム組織ハマスが主導したイスラエル南部への前例のない奇襲攻撃への対応として、ガザ地区で軍事作戦を開始した。ハマスによる奇襲攻撃では約1200人が殺害され、251人が人質にされた。 ハマスがガザで運営する保健省によると、それ以降、イスラエルによるガザへの攻撃で少なくとも7万3035人が殺されており、そのうち2万1280人以上が子どもだという。国連は、このデータを信頼できるものとみている。 イスラエルとハマスは昨年10月、ドナルド・トランプ米大統領の戦争終結計画の一環として停戦に合意した。しかしそれ以降、双方は停戦違反を繰り返しているとして互いを非難している。 ガザの保健当局は、停戦以降に1020人以上のパレスチナ人が殺され、うち265人が子どもだと報告している。イスラエル軍は、これまでに兵士4人が殺されたと発表している。 ■「前例のない死と負傷とトラウマ」 国連人権理事会が2021年に設立した「 東エルサレムを含むパレスチナ被占領地及びイスラエルに関する独立調査委員会(COI)」は、国際人道法および人権法に関するすべての疑惑のある違反行為を調査することを目的としている。 専門家3人からなるこの委員会の報告は、公式に国連を代表するものではない。 同委員会は昨年9月、イスラエルがガザ地区のパレスチナ人に対してジェノサイドを行っていると認定する報告書を公表。イスラエル当局と治安部隊が、ハマスとの紛争で、1948年のジェノサイド条約で定義されている5件のジェノサイド行為のうち、少なくとも4件を行ったと結論付ける合理的根拠があるとした。イスラエルはこの報告を強く否定し、「歪曲(わいきょく)された虚偽の文書」だと批判した。 同委員会はこれまでに、2023年10月7日にハマスや他のパレスチナ武装組織が戦争犯罪および国際法の重大な違反を犯したと結論づけている。また、イスラエルの治安部隊がガザで人道に対する罪や戦争犯罪を犯したともしている。 同委員会は、最新の報告書と共に発表した声明で、「激しい規模と体系的性質」を持ったイスラエル軍のガザでの作戦が継続しており、その結果、パレスチナの子どもたちが、前例のない死と負傷とトラウマ」に見舞われていると述べた。 委員長を務めるインド出身の元裁判官、スリニヴァサン・ムラリダル氏は、「2025年10月の停戦後にも、子どもたちが引き続き殺害されたり重傷を負ったりしている。イスラエルは引き続き、停戦と、国際法の下でパレスチナの子どもに負うべき保護を軽視している」と述べた。 「パレスチナの子どもたちの保護、ケア、生存は、パレスチナ人の自己決定権と不可分だ」ともムラリダル氏は述べ、「子どもを標的とすることで、イスラエルはパレスチナ人が存在し、その将来を決定する能力そのものを攻撃している」と語った。 ■拷問や飢餓、教育機会の損失も 報告書は、イスラエルが4枚の回転翼が付いたクアッドコプター・ドローンや狙撃兵による精密兵器を使った攻撃で、生命維持にかかわる臓器を狙ったり、住宅や学校、避難民キャンプなど子どもが多い場所を高威力の兵器で攻撃したりし、ガザのパレスチナ人の子どもたちを直接標的にしてきたと指摘した。 また、占領下のヨルダン川西岸において、イスラエル兵や入植者による攻撃からパレスチナの子どもたちが保護されなかった点についても、イスラエルが法的責任を負うとしている。 報告書はさらに、ガザおよびヨルダン川西岸の子どもたち、とりわけ思春期の男子が、「イスラエルの刑務所や拘束施設で逮捕され、拷問を受け、不当な扱いを受けている」とし、「パレスチナの子どもを標的とした、性的およびジェンダーに基づく暴力の事例が、しばしば逮捕時や拘束中に起きている」ことを記録したとしている。 イスラエルによるガザの新生児および小児病院への攻撃については、「子どもたちの生命維持に不可欠な医療へのアクセスを体系的に解体し、保護対象集団である子どもたちの生存を損なっている」と指摘した。 報告書はさらに、イスラエルが戦争手段として飢餓を用いていると非難し、ガザへの人道支援物資の搬入制限が「ガザの子どもたちに急性および慢性の栄養不良を引き起こし、生存に必要な基本条件を奪っている」と警告している。 このほか、学校への攻撃や大規模な強制移動、強制的な閉じ込めを通じて、イスラエル当局が「子どもたちの学習能力を体系的に妨げ、その結果として、パレスチナ社会自体の知的・社会的基盤を損なっている」と主張している。 ■イスラエルは報告書を否定 イスラエル外務省はこの報告書を非難し、同委員会について、「真実を追求するのではなくイスラエルを特定し中傷することを目的とした、根本的に欠陥のある仕組みだ」と述べた。 また、「ハマスによって残虐に殺害され、拉致され、標的とされたイスラエルの子どもたちを完全に無視しており、パレスチナの子どもを人間の盾や戦争の駒として利用するハマスの冷酷な行為を見逃している」と主張。「信頼できる検証手段を欠いている」と非難した。 イスラエルの指導者らはジェノサイドを一貫して否定しており、ガザでの軍事作戦は自衛のために行われ、ハマスや他のパレスチナ武装組織を打倒し、イスラエル人の人質の解放を確保するのが目的だとしている。 また、イスラエル軍は国際法に従って行動し、民間人への被害を軽減するために可能な限りの措置を講じていると主張している。 国際司法裁判所(ICJ)は現在、南アフリカが提起した、イスラエル軍をジェノサイドに問う訴訟を審理している。イスラエルはこの訴訟について「完全に根拠がない」とし、「偏った虚偽の主張に基づいている」と述べている。 (英語記事 UN commission of inquiry says Israel committing genocide in Gaza by deliberately targeting children)