「虐待を実名で報じるのはやめて」「誰も幸せになれない」 元巨人・阿部慎之助氏逮捕のメディア報道に児童福祉の現場からあがる悲痛の声

巨人の阿部慎之助前監督(47)が18歳の長女への暴行容疑で書類送検された件について、東京地検は6月15日、不起訴処分とした。プロ野球の現役監督が辞任に追い込まれた重大ニュースとして報道は苛烈を極め、長女が児童相談所に相談したという経緯から、当初は阿部氏の虐待を疑う憶測も広がった。しかし、児童福祉の現場からは、「虐待事案を実名で報じるのはやめてほしい」という切実な声があがる。実名報道された当事者家族がむかえる「誰も幸せになれない」結末とは――。 * * * 「これ以上報道しないで……」 早稲田大学人間科学学術院助手で、日本やイギリスの児童相談所での勤務経験もある田幸恵美さんは、阿部前監督についての連日の報道合戦に心を痛めた。SNS上では、阿部氏の家族関係についての臆測が瞬く間に拡散し、チャットGPTに勧められるまま児童相談所に相談したとされる長女への批判まで飛び交っていた。 「親から暴力をふるわれている子どもや、子に暴力をふるうほど追い込まれている親御さんが、あのような報道やバッシングを目にしたら、『児相に相談すると名前をさらされて大変な目に遭うかもしれない』と恐れ、SOSの声をあげることを躊躇(ちゅうちょ)しかねません」 虐待がある現実を伝え、それを抑止するのが報道の目的であれば、匿名でも問題ないだろう。実名報道は加害に及んだ親だけでなく、被害を受けた子どもをはじめ同居する家族にまで社会的な制裁を与えることになり、二次、三次のトラウマを生み出しかねない、と田幸さんは危惧する。 「世間は、子どもに暴力をふるうなんて悪い親だ、と非難の対象として見がちです。でも、多くの虐待事案の背景には、親自身の置かれた環境や、成育歴、精神的ストレスなど複雑な要因が絡みあっている。問題解決に必要なのは報道による制裁ではなく、警察、福祉、医療、教育といった関係機関が連携し、支援につなげることです。実名を報じられた親が精神的に孤立したり、職を失って経済的に追いつめられたりすれば、家庭環境や親子関係はさらに悪化する恐れがあります」

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