催涙スプレーの需要が高まっている。匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)による凶悪事件が多発し、護身用として買い求める人が多いとみられる。一方で、スプレーが悪用される事件や学校現場での誤使用も相次ぐ。販売に規制はないが成分によっては失明の危険も。使用上の注意点も多く、専門家は「リスクを理解して使用してほしい」と呼びかける。 「トクリュウのニュースを見て不安になった」。福岡県福津市の護身用品専門店「KSP」の白石浩一店長によれば、催涙スプレーの購入客からそんな声を聞くことが増えた。 店頭とオンラインショップで商品を販売。価格は5000~1万円程度で、売れ行きは好調という。一戸建てに住む高齢者から注文が入るほか、携帯用としても人気だ。 催涙スプレーはインターネットで誰でも購入が可能。流通している商品の多くは、唐辛子に含まれる「カプサイシン」が主成分だ。目に入ると涙が止まらなくなり、咳き込んだり、皮膚の痛みを引き起こしたりする。市販品の多くは自然由来の成分で後遺症のリスクはないが、化学成分を含むものは皮膚のただれや失明の恐れもある。 大人だけでなく、子供に護身用として持たせる家庭もあり、それに伴って学校現場でのトラブルが多発している。 ■小中学校で相次ぐ誤噴射、29人搬送騒ぎも 大阪府藤井寺市立中学校では5月末、「生徒が教室内で催涙スプレーを噴射した」と教員から消防へ連絡があった。教員と生徒の計5人が病院搬送。大阪府警などによると、生徒の1人が護身用に持っていた催涙スプレーを、別の生徒が壁に向けて噴射したという。 兵庫県加古川市の市立小学校でも6月、催涙スプレーが原因で29人が搬送された。同市教育委員会によると、転倒しそうになった児童の手が、別の児童がランドセルに付けていた催涙スプレーに当たり、誤噴射されたという。 事件に悪用されるケースも後を絶たない。愛知県警は同月、名古屋市西区の大型商業施設で男女8人が搬送された異臭騒ぎに関し、威力業務妨害容疑で20代の男を逮捕。男は「催涙スプレーを使った」と供述し、自宅の捜索では催涙スプレー9本が押収された。 一度の使用でも、複数人にけがを負わせることがある催涙スプレー。そもそも護身用品としての有効性を専門家はどう見ているのか。