「検察なめんなよ! 命かけてんだよ、私は」 7月15日、大阪地裁の法廷に、怒号が響き渡った。すさまじい迫力だった。 大阪地検特捜部の取り調べ中、容疑者を大声で叱責、罵倒したとして特別公務員暴行陵虐罪に問われている田渕大輔被告(現東京高検検事)の公判で、その様子を録画した映像が法廷で公開された。大声で怒鳴り、机をたたく。刑事もののドラマのような取り調べの模様が、法廷に映し出された。 不動産会社プレサンスコーポレーション(大阪市)が絡んだ業務上横領事件の捜査で、田渕被告は担当検事として2019年12月、逮捕された同社の元部長の取り調べを担当した。特捜部は同社の山岸忍元社長が18億円を貸し付けていた学校法人元理事長(業務上横領罪で実刑判決が確定)が、返済のために法人の土地を売却した横領事案に、山岸氏も関与していたとみていた。だが、元部長は山岸氏の関与を認めなかった。田渕検事は威圧的な取り調べを繰り返し、その結果、元部長は山岸氏が関与したと認める供述をしている。山岸氏はこの供述などを根拠に逮捕・起訴されたが、裁判では元部長の供述は信用できないと認定され、無罪が確定した。 山岸氏は田渕検事の取り調べが違法だったと刑事告発したが、大阪地検は田渕検事を不起訴処分とした。山岸氏はさらに大阪地裁に付審判請求を申し立て、それが認められて、田渕検事は現職検事としては初めて、裁判所の付審判決定によって被告席に座ることになったのだ。 7月15日の法廷では、19年12月6日から9日にかけての田渕検事による元部長の取り調べを録画した動画6本が公開された。 ■「言ってること間違ってると思わないから」 田渕検事は、12月6日の取り調べにあたって、「検察の理念」が書かれた紙を取り出して元部長の前で読みあげている。09年に大阪地検特捜部が厚労省元局長を逮捕・起訴したが無罪となった冤罪事件で、検事が証拠品を改ざんしていたなどの不祥事が明るみに出た。その反省から11年に制定された倫理規定が「検察の理念」だ。 〈検察官はああいう事件を教訓にね、絶対に次は失敗しないように注意しなさいと。特にこの(理念の)3番、「無実の者を罰し、あるいは真犯人の処罰を免れさせることにならないよう知力を尽くして事案の真相解明に取り組む」。これですよ〉 田渕検事は理念を読み、机をドンドンドンと叩く。 〈上級庁からは厳しい目で見られるわけですよ。「検察の理念」があるから。「おめえら、勝手なことすんなよ」と。だから、こうやって録画録音をしてるんですよ。私の監視ですよ、これは。でもね、私はひとつもこれ、気にしないもん。だって、私、言ってること間違ってると思わないから〉