「254万円貸した」ライブ配信女性殺害の男(44)に懲役16年…犯罪心理学者は「現実検討能力の欠如」を指摘

2025年3月に東京・高田馬場の路上で、ライブ配信中の22歳の女性が切り付けられ、殺害された事件。その様子は被害者のスマホから生配信されていた。 2025年3月11日午前9時51分ごろ。現場は東京・新宿区高田馬場の路上で、殺害された佐藤愛里さん(当時22歳)は「最上あい」を名乗る人気の動画配信者だった。殺人などの罪に問われたのは高野健一被告(44)だ。 2人が出会ったのは動画配信サービスだった。2021年12月、視聴者の1人だった高野被告は、画面の向こうの最上あいに恋愛感情を抱くようになる。やり取りはSNSのDMから、やがてLINEを交換。佐藤さんへ投げ銭などで使ったお金は半年で163万円にのぼった。 2022年1月、2人のやり取りは、まるで恋人のようになっていた。好意の言葉を何度も送る高野被告。交わしたLINEは記録が残るだけでも約4万通。その一方で佐藤さんが距離を置こうとすることもあった。その度に高野被告はすがるように関係の継続を求めたという。 2022年8月、佐藤さんから「アイリが働いてる店来る?」というメッセージが届く。佐藤さんが働くのは山形のキャバクラ店で、高野被告が暮らすのは栃木だったが店に向かった。2人が直接会ったのはこのときが初めてで、高野被告は4回店に通い、店には合わせて77万円を使った。交通費や宿泊費、プレゼント代も惜しまなかった。 2022年9月ごろから彼女のLINEに「金の話」が交じり始める。最初に振り込んだのは4万円だったが、その後も理由を変えながら金の無心が続き、親密な関係を維持するため高野被告は金を工面し続けた。高野被告は消費者金融からも借りるよう求められ、佐藤さんへの貸付は2カ月で合わせて254万4800円にのぼった。 佐藤さんは「すぐ返す」と伝え、1度だけ3万円を返済したが、それ以降、貸した金が戻ることはなかった。2023年8月、高野被告は貸金の返済を求めて佐藤さんに民事訴訟を起こした。高野被告は就労支援で職に就き、警察にも法テラスにも相談。裁判所は佐藤さんに金を支払うよう命じた。しかし差し押さえた預金口座の残高は約160円だった。 佐藤さんは「稼ぎの多くは事務所に入り、手元に残るお金は無く、財産は無い」と語る一方、交際していた男性との結婚をSNSで公表。判決によれば、婚約者とともに収入を隠すような行動もとっていたという。 公判によると、このころ高野被告は知人に「お金を返してもらうのはほぼ諦めている。復讐だけしたい方向になっている。お金の問題を世間にさらしたい。裁判沙汰にしたい」と、LINEを送っている。 その2日後、高野被告はのちに凶器となるナイフを1本購入。もう1本のナイフは前年の12月に購入しており、知人には「あいつには苦しんでほしい」というLINEも送っていた。 犯行前夜に1本の配信告知を観た高野被告は、佐藤さんが翌日に山手線を1周するという内容を知り、翌日の犯行を決意したとされる。 2025年3月11日早朝。高野被告は刃渡り約12.6センチと15.6センチのナイフ2本を所持し、栃木の自宅を出て電車で東京に向かった。 午前8時半ごろ佐藤さんは生配信を開始。高野被告は配信を観ながら移動し、画面のなかの言葉や風景を手掛かりに佐藤さんの居場所を絞っていき、午前9時51分ごろ配信中の佐藤さんを発見する。 高野被告は正面から体当たりし、腹部をナイフで刺した。倒れた佐藤さんの顔や首、胸、腹などを少なくとも55回、ためらうことなくナイフを振り下ろした。さらに、高野被告は地面に落ちた配信用のスマートフォンを拾い「まだ動くんだ…」「死んでますかね」と、佐藤さんの顔をアップで撮影し、血だらけの佐藤さんの姿はそのまま生配信され続けた。高野被告は駆け付けた警察官に現行犯逮捕された。 高野被告は「配信者だから、顔を傷つけてやればいいんじゃないかと思った。顔を傷つけるつもりで、殺すつもりはなかった」と主張。しかし東京地裁の井戸俊一裁判長は「転倒した被害者の上からためらうことなく50回以上も刺しており、確実に殺す行動を取っている」と、この主張を退ける判断。「犯情は非常に悪い」と非難しながらも「金をめぐる一連の経緯には『相応に同情の余地がある』」として、高野被告に懲役16年(求刑懲役20年)の判決を下した。 この判決を踏まえ、犯罪心理学者の出口保行氏は「お金のやり取りがあったということは、客観的な事実なのだろう。そこは争うところは何もないと思う。ただ犯罪という枠組みで考えるものなのかとなると、また話は別になってくる。要は善意で人にお金をあげる人はいくらでもいる。その額が過度であったり、相手の要求ごとがどういうことだったのかによって、下手したら詐欺にもなり得る。ただ、今回の事件でそこを深掘ってもあまり意味はない」とコメント。 さらに、殺人事件における加害者と被害者の面識率は90%を超え、動機の60〜70%は「不満や憤まんなど、対人トラブル上の負の感情」と説明し、「60〜70%が刃物を使う。だから今回の事件は、殺人事件のセオリー通りに起きている事件である。個人間の争い、トラブル、憤まん、不満というものに基づいて、この事件が起きている。これが客観的に見れば当たり前のこと」と分析した。 その上で、「ただ殺人というものを考えていく時に、現実検討能力が本当に重要になる。自分が憎いから相手を殺します、これは筋が通っているような気がするが、筋が通っていない。相手がいくら憎くても絶対に殺しちゃいけない。でもその時に、殺すという手段、選択肢を取ってしまうのは、その場での自分の現実をどうやって検討することができるのか、という自分の立ち位置、それが社会に及ぼす影響、その友人に及ぼす影響、すべてを考慮した上で人は判断する」と説明。 「リスクとコストというのを考えた時にリスク、これをやったら捕まるに決まっている。コスト、全部失っちゃうのは当たり前。だからなぜリスクとコストを度外視にしてまで、その時点で殺すという判断をしたのかを本人が自分なりにきちんと説明できるようにならないと、この人はいつまで経っても同じようなことを繰り返す危険性が高い」と続けた。 (『ABEMA的ニュースショー』より)

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