23日午前、慶尚北道(キョンサンブクド)慶山市巳洞(キョンサンシ・サドン)のあるアパート団地。老朽化した団地内にある平屋建ての管理事務所は、出入り口付近が焼け焦げて真っ黒にすすけていた。その周囲には、警察が黄色い規制線を何重にも張り巡らせていた。住民の一人は、「外で突然『ドン』という大きな音がしたので確認すると、管理事務所から体に火が付いた人たちが飛び出してきた」と話した。また別の住民は、顔見知りの近所の人が大けがを負ったと涙を流した。 この日午前8時29分ごろ、このアパート団地の管理事務所で爆発を伴う火災が発生し、40~70代の8人(男性2人・女性6人)が負傷した。このうち6人は全身にやけどを負った。重傷者のうち1人は容体が重く、ヘリコプターでソウル市内の病院へ搬送されたという。現在までのところ、死亡者は確認されていない。管理事務所の火は、約20分後の同日午前8時48分ごろに消し止められた。 事故当時、管理事務所には管理規約の問題などを話し合うため、管理事務所の関係者や住民らが集まっていた。警察は、70代の男性住民Aがこの場所で可燃性の液体をまいて放火したとみている。Aもやけどを負った。 このアパート団地では、一部の住民と管理事務所の間で対立があったという。ある住民は、「管理事務所に放火したAは、以前から何の資格もないのにアパートの運営に関わろうとし、関係者を困らせていた」とし、「最近行われた住民代表を選ぶ選挙でも、自分の思いどおりにならないと投票箱を壊すなど、乱暴な行動に出ていた」と話した。Aは最近行われたアパート住民代表選挙で役員に立候補したものの、落選したことが分かっている。 Aは火災直後に現場を離れて自宅へ戻り、刃物を持って再び現場に現れ、「皆殺しにしてやる」「切腹してやる」と叫びながら住民らを脅し、警察に逮捕された。また別の住民は、「事故前日の22日夜にも、管理事務所周辺の防犯カメラ(CCTV)のケーブルが何者かに抜かれるか壊されているのが見つかり、23日午前に管理事務所へ確認しに行こうとしていた」とし、「今になって思えば、犯行に及ぶため、わざとCCTVを壊したようだ」と話した。今回の事件が計画的な犯行だった可能性を示す証言だ。さらに、この住民は、「約1カ月前にもAが敬老堂(高齢者の憩いの場)に入り、高齢者に殴りかかるようなそぶりを見せて脅したことがあり、警察に通報したが、特に対応はなかった。あの時きちんと対応しなかったから、こんな大事件になってしまった」と指摘した。 警察はこの日、Aを現住建造物等放火の容疑で不拘束立件した。また、事故現場の鑑識を行う一方、目撃者や負傷者らを対象に事故の経緯を調べる方針だ。警察関係者は、「現在、被疑者が治療を受けているため、本格的な取り調べはまだ始められていない」としたうえで、「計画的犯行かどうかを含め、浮上しているあらゆる疑問点について捜査する予定だ」と述べた。