国際刑事裁判所、主任検察官を解任 性的不正行為の疑惑で

アナ・ホリガン・ハーグ特派員、ロバート・グリーノール記者 国際刑事裁判所(ICC)は24日、カリム・カーン主任検察官を賛成多数で解任することを決定した。カーン氏をめぐっては2024年、性的不正行為の疑惑が浮上して調査が開始され、今年6月に停職処分を受けていた。 ICC(125締約国)はこの日、米ニューヨークの国連本部で特別会合を開き、賛成82票でカーン氏に対する解任決議を採択した。 カーン氏は2021年に3代目のICC主任検察官に選出された。 ICCの監察部門は今年6月、カーン氏がICCの後輩スタッフと不適切な性的関係を持ったうえ、この女性が被害について申し立てるのを阻止しようとし、「重大な職務違反および重大な不正行為」を行ったとの判断を下した。 カーン氏は、自身に対するすべての疑惑を繰り返し否定している。カーン氏の弁護人は、「利用可能なあらゆる法的手段を通じて、今回の決定の合法性と公正性」について争う方針だと述べた。 解任されたカーン氏にどのような法的手段が残されているのかは、直ちには明らかにされなかった。 ICCは採択後に声明で、カーン氏の解任を支持したICC締約国特別会合の決定を「留意した」と述べた。 「ICCは今後も、すべての職員にとって安全で包摂的かつ敬意ある職場環境を維持することを、最重要事項としていく」と、声明には書かれている。 ただ、今回の一連の手続きは、1人の検察官の進退を左右するだけにとどまらず、戦争犯罪について起訴・審理する権限をもつ、世界で唯一の常設の裁判所のあり方を一変させる可能性がある。 カーン氏の不正行為疑惑をめぐる調査を受け、ICCには厳しい視線が向けられ、内部の対立を深めた。また、ICC全体を弱体化させ、事実上の解体を狙う前例のない動きもみられた。 ICCの支持者の間では、同裁判所が弱体化し、世界で最も深刻な脅威に対処する力が低下するのではないかとの懸念が広がっている。 著名なイギリス人弁護士のカーン氏は、2025年5月以降、不正行為疑惑への対応のため自主的に休職していた。イギリスの法曹基準委員会が独自調査を行う間、暫定的な業務停止処分を下したため、同氏は現在もイギリスでの弁護士業務を停止されている。 カーン氏は、24日に国連本部で行われた投票に出席できなかった。パレスチナ・ガザ地区におけるイスラエル当局者による戦争犯罪疑惑をICCが捜査していることを受けて、ドナルド・トランプ米政権が科した制裁の影響で、カーン氏はアメリカへの入国が禁止されている。 ■何があったのか ICCをめぐる論争は、カーン氏が解任されても収束する可能性は低い。 今回の決定は、ICCに厳しい目が向けられる中、極めて慎重な手続きを経て下された。 2024年5月、カーン氏が女性職員に対する性的不正行為に及んだとする疑惑を、第三者がICCに申し立てた。 ICC監察部門・独立監視機構(IOM)は調査を開始したものの、被害を訴えたとされる職員が協力を拒んだため、調査は打ち切られた。 こうした手続きに対し、調査が適切に行われず、IOMへの信頼が損なわれたとの批判が上がった。 最終的に調査担当者たちは、カーン氏に対する疑惑を裏付ける十分な証拠はないと結論づけた。 2024年10月には、2度目の申し立てがあった。この件は国連の内部監査室(OIOS)に移管され、性的不正行為および職権乱用の疑惑について、さらに幅広い調査が実施された。 2024年11月から2025年12月にかけて行われたこの調査では、5000ページを超える証拠や証言が集まった。 OIOSの調査結果はその後、3人の判事で構成される委員会によって審査された。同委員会は、カーン氏の行為が「重大な不正行為」、「比較的軽微な不正行為」、あるいは「不正行為にはあたらない」のいずれに該当するかを助言する役割を担った。 カーン氏に対する疑惑は、ICCが異例の圧力にさらされると同時に、多方面で政治的緊張が起きている時期に浮上した。 カーン氏は2024年11月、ガザでの戦争犯罪疑惑をめぐり、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアヴ・ガラント前国防相、イスラム組織ハマスの軍事部門カッサム旅団のモハメド・デイフ司令官に逮捕状を出した。イスラエルの同盟国アメリカはこれを受け、カーン氏に制裁を科した。 米政府は近年、ICCに対してますます敵対的になっている。 アメリカは今月初めに、ICCがアメリカの主権を脅かす存在だとして、同裁判所を「少しずつ」解体するため「政府が一丸となった」キャンペーンを新しく立ち上げた。具体的には、ICCからの離脱や、自国民に対するICCの管轄権を拒否するよう同盟国に求めるため、ビザの発給禁止や資産凍結を行うとしている。 アメリカ、ロシア、イスラエルはいずれもICCに加盟していない。ただし、これらの国々の国民がICC加盟国内で犯した犯罪について、ICCは管轄権を行使できる。 (英語記事 ICC top prosecutor removed over sexual misconduct allegations)

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