長野県内で刑法を犯したベトナム人の検挙件数は、去年1年間で246件に上り、2023年の3倍以上に急増しました。 技能実習制度などで日本を訪れるベトナム人がなぜ罪を犯してしまうのか。 取材を進めると、制度上の問題点などが浮かび上がってきました。 八ヶ岳を望む長野県川上村。レタスの出荷量で全国1位を誇り、今年も農作業が始まっています。 農家と共に仕事をするのは、ベトナムなどから訪れている外国人。伊藤勝敏さんの畑では、「特定技能」を持つ2人が働いています。 キェムさん:(なぜ日本に?)「私の子どもの将来のためです。大学3年生です。毎月10万円ぐらい送っています」 トゥックさん:「日本の給料は(ベトナムより)高くていいです。(ベトナムで)去年家を建てました」(家族は?)「奥さんと子ども2人娘です。子どもは小さいから私は仕事を頑張ります」 ベトナムで暮らす家族のため、出稼ぎに来ているのです。 開発途上国への貢献などを掲げ、1993年に始まった「外国人技能実習制度」。 日本にいられる期間は最長5年、原則、職場の変更はできません。 実習生として3年間働くことなどで、今度は川上村の2人のように「特定技能」の資格を取ることができます。転職の自由があり、さらに5年以上働くことができます。 制度は国内の労働力不足を補える日本側のメリットもあり、この30年で実習生が大幅に増加。中でもベトナム人が最も多くなり、県内でもおよそ7600人が学びながら働いています。 こうした中、去年、全国的に相次いだのがベトナム人による犯罪でした。 去年、松本市を含む、関東周辺の山あいの一軒家などが狙われた連続強盗事件。犯人はベトナム人の2人でした。 さらに、長野市や能登半島の被災地を狙った連続侵入窃盗事件も。逮捕されたのは元実習生などの5人で、このうちの4人が不法残留でした。 家族を助けたいー。 そんな思いを抱いて日本に来たはずの彼らがなぜ、罪を犯してしまうのか。 多くのベトナム人が暮らす群馬県のベトナム人協会を訪ねました。 フイ会長:「日本へ来るために大体100万円以上借金を背負ってしまう。会社の仕事がどうしても嫌とか。違う仕事を探したいケースが多い」 実習生は出国する際、現地の送り出し機関にベトナムの平均年収の倍以上といわれる手数料を払います。多くが借金を抱えたまま家族への仕送りとその返済に追われるのです。 日本に来ても言葉の壁や、職場の環境・待遇の不満などが待ち受けます。失踪する実習生も多く、在留資格を失って不法残留の状態の人は現在1万人以上いるといいます。 協会への取材で明らかになったのが、不法残留の人が集うSNS上のコミュニティが存在していること。 フイ会長:「これは完全に誘い出しですね。違法な仕事の宣伝紹介ですね」 そして、犯罪へと誘い込む悪質な投稿があることでした。川上村で働く2人もこのコミュニティの存在を知っていました。 トゥックさん:「ボドイ、わかります。これは大変です。ダメです」 キェムさん:「私は全然考えません。どこにも行きません。ここ一番いいです。仕事が多いし、給料も結構あります」 取材を進めると、働く地域、仕事の内容によって給料に大きな差があることも失踪の要因になっていることがわかりました。 レタス農家 伊藤勝敏さん:「仕事によって全然残業ない、お金にならない、月収10万、15万円ならベトナムにいても同じだというのもあるし、借金をして日本に来るから(稼げなければ)働いていても意味がない」 レタス農家の伊藤さんは、外国人に時給1000円から1150円を支払っていて、忙しい時期には残業や休日手当も出すといいます。 川上村では働く期間が農作業のある春から秋までに限られますが、給料が高いことから多くの人が集まり、中には失踪した人が働きたいと訪れることもあるそうです。 さらに、こんな事情も・・・。