4件目の“ホルスの目殺人事件”の現場近くに設置されていた自動販売機の防犯カメラに映った人影をたどり、近くを通りかかった業者の車のドライブレコーダーを確認した小峰(白洲迅)。しかし、すでにその当日の映像は消去されており、小峰よりも先にその映像を確認しにきた人物が設楽(志尊淳)であることを知らされる。設楽浩暉は“ホルスの目”の犯人かもしれない――そんな新たな疑惑をにおわせながら、『恋は闇』(日本テレビ系)第3話は幕を開ける。 一夜を共にした設楽と万琴(岸井ゆきの)。万琴が目を覚ますと設楽の姿はなく、いつものように取材現場で顔を合わせても、まるで何事もなかったかのような振る舞いをする設楽にモヤモヤした気持ちを抱く万琴。事件当日に不審な男を目撃したという近所の男子中学生の証言を得られるのだが、いつもならば食い付く設楽は「信ぴょう性がない」と一蹴。5件目の事件が起きるであろう5月5日が近付くなか、万琴はこれまでの事件現場の地図から次の現場となりそうなエリアを予測。その場所に向かうと、なぜかそこに設楽が現れるのだ。 設楽の過去(の一部)という、このドラマに必要不可欠な情報が明らかにされた今回のエピソード。まずひとつは、10年前に立川市で起きた女性弁護士殺害事件。その被害者は、設楽の母親・久美子(紺野まひる)であり、被疑者として逮捕され有罪判決を受けたのが父親である貫路(萩原聖人)。設楽は事件の第一発見者であり、前回彼がうなされていた悪夢にあった血まみれの手の光景は、その時の記憶ということだろう。ちなみに現在30歳の設楽は、当時おそらく20歳前後。今回彼は、大学を中退したと語っていたが、この事件の影響もあってのことかもしれない。 久美子の遺体の状況が、一連の“ホルスの目殺人事件”と一致(コンタクトレンズはないが)していること。貫路が出所したのが昨年の12月で、その次の月から事件が起きていること。設楽と万琴が、次の現場と見立てた牛込柳町で出会った男性から入手した、不審な男の映像に映っていたのも貫路であると思われる。これらをその通りに受け取れば、設楽が事件解決に躍起になる理由=父の凶行を止めるためという筋書きができあがっても変ではないのだが、その動機が見えない以上、まだ定かではない。 しかも10年前に最初に捜査線上にあがったのが設楽自身だったという点と、鑑識の松岡(浜野謙太)が当時を振り返って語った疑惑が、新たなクリフハンガーといったところか。第1話のラストで示唆されたスニーカーをめぐる設楽への疑惑は、第2話の早い段階でとりあえずは払拭されている。とはいえ冒頭で触れた前回のクリフハンガー――ドライブレコーダーに映る怪しい人物は、設楽が映像を確認するシーンでおそらく彼自身であることが示される(男子中学生が見たのも、設楽ということだろう)だけであり、疑惑が残った上にまた新たな疑惑が積み重ねられたという格好である。 ところで今回は、貫路の正体も然り、これまでバラバラだった登場人物たちが少しずつ繋がり始めていたことも触れておく必要があるだろう。そのなかでもキーパーソンとなりそうなのが、万琴と設楽が付き合っているという噂を聞き、一瞬表情を曇らせた野田(田中哲司)である。彼は刑事の大和田(猫背椿)と親しげに喫茶店で会話をし、設楽の母親の事件の資料を彼女に渡す。さらに終盤では、貫路と対面。おそらく10年前に、彼は取材する側の立場で事件に関与していたのではないだろうか。 2つめの“設楽の過去”は、万琴との関係である。第1話の終盤“桜の花びらを3枚同時につかむと幸せになる”と万琴が言ったのに対し、何かを思い出したようにハッとした表情を見せた設楽。第2話での彼の夢のなかには桜の花びらをつかもうとしている少女の姿があり、今回の序盤で古い缶にしまわれていた小学校時代の名札の裏には3枚の桜の花びらが収められていた。そして中盤、“3枚同時に〜”というのが万琴自身が考えて作りだしたことを知り、設楽は再びハッとした表情を見せるのだ。 要するに、第1話の時点で万琴の言葉から、記憶のなかにいる設楽にとって重要な少女の存在を目の前の彼女に紐付け、今回の発言でそれが確証にたどり着いたと考えるのが妥当であろう。恋愛ドラマにはある種お決まりである、2人は過去に出会っていたという“運命”パターンか。それでも万琴側からはいまのところその記憶に繋がる素振りは見えない。ここはストレートに攻めるのか、それともあえてひねりを加えるのか。いずれにせよ、向葵(森田望智)が設楽と対面した瞬間の一瞬の間は、かなり意味深である。