SNSの「中居くんは悪くない」はヒムパシー? なぜ男性の「性加害者」に同情が向けられるのか

「中居くんは悪くない」 「中居くんは被災地に2億円寄付してるのに、あんなひどいことをするわけがない」 元タレントの中居正広氏の元女性アナウンサーへの性加害の件で、SNSを見ていた都内の会社員の女性(35)は、驚いた。 その数日前、フジテレビが設置した第三者委員会が中居氏の元女性アナウンサーへの「性暴力」と、「重大な人権侵害」を認定した。それなのに、加害者である中居氏をかばうような話がSNSで広がっていたのだ。女性は、20代の時に性被害に遭った。性加害者を擁護する気持ちには一切なれない。かばうようなことを言う人がいることが信じられなかった。 「しかも『』といったハッシュタグも立ち、第三者委員会の発表を虚偽と決めつけるような投稿もありました」 こうした現象は中居氏のケースに限らない。男性が性加害を起こした際、加害者に同情の声が上がることはよくある。お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志氏が一昨年12月に性加害疑惑を報じられると、「やめないでください。応援しています」など、松本氏を擁護する声が上がった。 ■「him(彼)」と「sympathy(同情)」 著名人だけの話ではない。以前勤務していた学習参考書を出版する会社の社長から性被害に遭った女性(40代)も、同様の経験をした。被害を社内のハラスメント窓口に相談したところ、役員から、社長の会社への貢献を滔々と語られ、「(社長は)悪気があったわけではない」などと言われたという。 「加害者に同情が寄せられる一方で、被害者である私のほうが『なぜついていったのか』『断れなかったのか』と責められるような空気を感じました」(女性) 性暴力やセクハラをした加害者の男性に過剰な同情が向けられることを「ヒムパシー」と呼ぶ。聞きなれない言葉だが、「him(彼)」と「sympathy(同情)」を組み合わせた造語で、2017年に米国のフェミニズム哲学者のケイト・マン氏が著書『ひれふせ、女たち』(原題『Down Girl』の中で初めて使用した。

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